[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)
元記事公開日:
2024/04/11
抄訳記事公開日:
2024/06/03

NASEMがSTEMM従事者の介護支援に関する報告書を公表

To Support Caregivers in STEMM Workforce, New Report Calls for Academia, Government to Strengthen Legal Protections and Develop Innovative Practices

本文:

(2024年4月11日付、全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)の標記発表の概要は以下のとおり)

NASEMは、STEMM(Science, Technology, Engineering, Mathematics, and Medicine)分野で働く家族介護者を支援・保護するために、大学、議会、連邦政府機関、民間助成機関に向けた提言として、家族介護の責任を負う者の定着、昇進等を促進するための制度改革、革新的実践方法の試験的導入、包括的な法的支援を求める報告書を公表した。

本報告書は、介護は社会にとって必要かつ重要な側面であり、STEMM分野における介護者への適切な支援は、経済成長、科学的イノベーション、各家庭への経済社会的効果、そしてジェンダーと人種的平等を推進するために極めて重要であるが、STEMM従事者は介護に対する政府や組織の支援不足に直面していると述べ、次のような提言を行っている。

① 包括的な連邦有給休暇
本報告書は、育児や高齢者・配偶者・扶養家族・拡大家族・終末期・死別後の介護を対象とした、最低12週間の包括的な有給介護休暇の付与を義務付ける法律を制定するよう、連邦議会及び連邦政府に勧告している。米国はOECD加盟国の中で唯一国家的な有給介護休暇政策を有しておらず、包括的な連邦法の制定により、有給休暇の国家標準が策定されることが期待される。また、STEMMを支援する各連邦省庁には、半導体開発資金を求める者に対する施設内での保育機会の提供を義務付けた「半導体・科学法」のモデルに従うことが奨励される。

② 革新的実践方法への資金提供
本報告書は、連邦及び民間の研究助成機関に、STEMM分野における介護者支援のために、介護を考慮した助成金期限や期間の無償延長、介護休暇取得者の資格期限の柔軟性、介護休暇取得者の復帰プログラムの検討を求めている。また、イノベーション促進のために、介護者のための新プログラムや方針の試験的な実施や、介護者支援ガイダンス開発を行う機関への助成金提供を通じた、介護研究への支援を求めている。

③ 制度の改善
本報告書は、学術機関に対して既存の全ての法的要件に従い、法的遵守のための最低限の慣行を満たし、それを上回ることを保証することによって、介護中の教職員、ポスドク、学生の法的権利を守ることを求めている。また、大学で実施されている既存の介護者支援方針が常に一貫して適用されているわけでも、十分に周知されているわけでもないことを指摘し、大学の指導者に対して、介護者関連ポリシーや法的義務の遵守を保護、公表、監視する責任を負うシニアリーダーやオンブズマン、チームを任命すべきであると勧告している。

④ 文化の変革
本報告書は、介護についての一般的な思い込みや、文化的偏見を変えることの必要性を述べ、特に有色人種の女性への負担を指摘している。仕事以外の責任を負うことにまつわるスティグマに挑戦する必要性を説き、例えば、アフィニティ・グループを設立して様々な形の介護を紹介し、介護に関する会話を正す機会を提供することを有効な実践方法の一つとして挙げている。

本報告書は、国立衛生研究所(NIH)、国立科学財団(NSF)、国立標準技術研究所(NIST)、米国航空宇宙局(NASA)、Doris Duke財団、Henry Luce財団の後援を受け、NASEMの「STEMM分野で働く家族介護者の支援政策と実践に関する委員会」によりとりまとめられた。

[DW編集局]