[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
高等教育・研究省など
元記事公開日:
2024/05/23
抄訳記事公開日:
2024/06/06

政府諮問委員、医学生物学研究の「リノベ計画」提出 70項目を提言

Remise du rapport de Anne-Marie Armanteras et Manuel Tunon de Lara sur la rénovation de la recherche biomédicale

本文:

 フランスの医学・生物学研究について政府の諮問を受けていた委員2人が、70項目におよぶ提言を盛り込んだ「医学・生物学研究リノベーション計画」を5月23日までに政府に提出した。政府の今後の医学・生物学分野の研究開発政策は、この計画に沿って企画・立案される見通し。

 リノベーション計画を提出したのは、2020~22年に医療・障害・高齢者担当の大統領府顧問を務めたアンヌ=マリー・アルマンテラス=ド=サクセ氏と、ボルドー大学教授で14~22年に同大学長、20~22年に全国大学学長会会長を務めたマニュエル・テュノン=ド=ララ氏(呼吸器学)。

 70項目の提言は、下記の6種類の軸に分類されている(カッコ内の数字は、分類されている提言の番号)。

  • INSERMを、医学・生物学研究の企画やファンディングを行う機関へと発展させること。(1~11)
  • 医学・生物学研究を行う契約拠点に関する明確な政策を打ち出すこと。(12~18)
  • 医学・生物学研究における公的支援に遅れを取り戻すこと。(19~31)
  • 大学病院拠点における実習やキャリアの条件を再考すること。(32~37)
  • デジタル技術の進歩に依拠して起こりうる研究の激変を的確に捉え、伴走すること。(38~60)
  • 医学・生物学分野におけるイノベーションの原動力の加速に適応すること。(61~70)

 このうち第1項目では、国立保健医学研究所(INSERM)について「研究の運営とファンティングの二つの機能を持たせるべき」と言及。第12項目では、1950年代から続く大学病院(CHU)のモデルについて「診療、教育、研究の各機能の複合拠点としての戦略を反映させて再建すべき」、また第19項目では「医療研究にかかわる資金源を官民全体で一体的にコントロールする仕組みを作るべき」と指摘するなど、全体的に、既存の研究開発の拠点形成や資金支援のあり方の大きな変革を促している。

 フランスの医学・生物学分野の研究開発をめぐっては、マクロン大統領が2023年5月、「縦割りの論理にぶつかってしまっている。より団結させ、より支援を手厚くすること、一方でいくつもある支援の制度の垣根を取り払い、研究開発の遅れをさらに埋め、現場の研究者らの裁量に委ねることが重要だ」と演説するなど、政権としてかねてから問題意識を表明している。

 このことから政府は23年7月、同分野の研究開発を「簡素化し、かつ強化し、よりパフォーマンスを高める」(高等教育・研究省発表)ためにリノベーション計画の策定を目指すことを発表し、アルマンテラス=ド=サクセ、テュノン=ド=ララの両氏に諮問。両氏は高等教育・研究省管轄の「教育・スポーツ・研究部門査察チーム(IGÉSR)」と複数省庁の管轄にまたがる「厚生労働査察チーム(IGAS)」の協力を得ながら、医学・生物学分野の専門家217人に聞き取り調査を実施していた。

[DW編集局]