[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
国立科学研究センター(CNRS)
元記事公開日:
2024/05/27
抄訳記事公開日:
2024/07/01

CNRS: 研究インフラは欧州の研究戦略に不可欠な柱

« Les infrastructures sont un pilier essentiel pour la stratégie de recherche européenne »

本文:

(2024年5月27日付、国立科学研究センター(CNRS)の標記記事の概要は以下のとおり)

研究インフラ(IR)は、様々な国との調整を経て、欧州連合(EU)の支援を受けている。共同研究、技術革新、欧州の競争力と科学主権において重要な役割を果たし、宇宙や環境の観測、粒子加速器、デジタルサービスなど様々な分野で長年にわたって大きく進歩させてきた。

■単独の国では支えられない莫大な予算
欧州には「欧州研究基盤戦略フォーラム」(ESFRI)ランドマークの標章を持つ40以上のIRがあり、フランスはこのすべてのランドマークIRに貢献している。そこでのEUの役割は組織化と調整であり、IR参加国がその建設と運営に資金を提供する。

最先端の科学的、人的資源の集中、素晴らしい研究、明確な運営組織とガバナンスという特徴を持つIRでは、貴重な研究設備を舞台に技術的および方法論的な専門知識の共有が可能となる。IRは欧州の科学分野の長期戦略の手段であり、予算の確保とその聖域化が求められる。フランスは、欧州シンクロトロン放射光研究所(ESRF)、ランジュヴァン研究所(ILL)等のランドマークIRの設置を受けている。

■欧州委員会(EC)に対するIR支援
CNRSは欧州戦略としてインフラワーキンググループを設置し、IRを大いに支援している。2021年の設置以来、研究者の参加促進のため多くのプロジェクトを推進している。最近のEC報告書でも、フランスのプロジェクト数と助成金の増加が見られる。

■欧州の科学技術主権の強化
IRに対する欧州の影響は大きく、EUは、地域のニーズ分析から科学分野の社会実装に至るまで、研究・イノベーション枠組みプログラム(FP)を通じたIR利用資金の供与により重要な役割を果たしている。IRは基礎科学に止まらず、産業や経済の発展の原動力であり、産業界もIRの機器開発に貢献することで、この相互作用が欧州の科学的、技術的な主権を強化する。この一例が欧州のエクサスケールコンピューターで、急速に変化するデジタル環境で競争力を維持するために、欧州レベルで高度なコンピューティング能力を開発している。

オープンサイエンスはIRの基本的な価値であり、欧州と世界の研究者の間の知識共有と協力に寄与している。欧州オープンサイエンス・クラウド(EOSC)は、欧州のオープンサイエンス政策の実施のための主要なツールとなっている。

■IRの課題
一方でIRは、世界最高レベルを維持し、研究ニーズの進化に対応する上で重要な課題に直面している。一つは、多額の投資が必要になる場合である。ESFRIロードマップは、加盟国単独では資金調達ができない国際的IRに対して、一貫した対応をとるための戦略的ツールである。

データ管理は、IRが直面するもう一つの大きな課題である。大量のデータは複雑な管理と多大なコストを要し、人的にも技術的にもリソースが必要となる。この意味でEOSCなどのイニシアチブは、大規模な研究データへのアクセスと利用を促進するために不可欠である。

■FP10:ECの継続的なコミット
将来のFP10においてECは、IRに対して持続可能な役割を果たすべきである。重要なことは、加盟国はIRの維持費用を自力で負担することはできないため、IRの効果的な運用を継続させるように、ECはIRを利用する共同プロジェクトを支援することが必要である。

[DW編集局]