[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
原子力・代替エネルギー庁(CEA)
元記事公開日:
2024/06/05
抄訳記事公開日:
2024/07/12

人間活動による地球温暖化の速度が空前の上昇

Le rythme de réchauffement de la planète dû aux activités humaines n'a jamais été aussi élevé

本文:

(2024年6月5日付、原子力・代替エネルギー庁(CEA)による標記発表の概要は以下のとおり)

CEA、国立科学研究センター(CNRS)、メルカトル・オセアン・インターナショナル、フランス気象庁などの科学者を中心とした50人の研究者からなる国際コンソーシアムは、2年連続で地球規模の気候変動の主要指標を更新した。これによると2023年は観測史上最も暑い年であり、人間活動による気温上昇は10年ごとに0.26度ずつ増加しており、記録が始まって以来最も高いペースで地球温暖化が進んでいる。地球規模の気候変動指標に関する第 2 回年次報告書が科学誌「Earth System Science Data」に発表された。

人間活動による温暖化が進行し続けており、過去10年間(2014-2023年)では産業革命前と比較して気温が1.19度上昇。昨年の報告書で示された2013年から2022年の間の推定値である1.14度を超えていることが明らかになった。また地球温暖化を1.5度に抑えるまでに排出できる二酸化炭素の量を表す残存炭素収支は、現在の排出量の5年分に当たる約2,000億トンに過ぎないことも明らかになった。

2023年だけに限れば、人間活動による温暖化は1.3度に達した。この数字は同年に観測された地球温暖化(1.43度)よりも低いことから、エルニーニョ現象を中心とした自然の気候変動も影響していることが分かる。

またこの報告書では、世界の海運業界からの提供を含む、硫黄排出量の削減の効果に関する新しい情報も示されている。これらの排出物は、太陽光を直接宇宙に反射する反射力の強い雲の形成を促進することによって、大気を冷却する効果があるが、これらの排出量は継続的に減っており、この効果が薄まっている。昨年のカナダの山林火災によって粒子状の物質が排出され、この効果が維持されたが、粒子状物質の排出がもたらす寒冷化の効果は長期的には弱まっていくと指摘されている。

この研究のコーディネーターで、英国リーズ大学のプリーストリー気候未来センター所長のピアーズ・フォースター教授によると、温室効果ガス排出は、70%が石油、石炭などの化石燃料の燃焼によって引き起こされている。その排出量を劇的に削減すれば、今後我々が経験する地球温暖化のレベルが抑制されるという。また同時により強靭な社会を構築する必要がある。昨年世界が経験した山火事、干ばつ、洪水、熱波による荒廃が新たな常態になってはならないと警告する。

また温室効果ガスの排出量の増大は、地球全体のエネルギー収支にも影響を及ぼしている。このため海洋ブイや人工衛星により海洋、氷冠、地表、大気における前例のない熱流を追跡しているが、この熱流は長期的に見た平均よりも50%高くなっている。

CEAの気候学者ヴァレリー・マッソン=デルモット氏によれば、この年次報告書は、人間活動による熱蓄積の速度がさらに速くなり、気候に対する人間の影響が強まっていることを強調し、また人間活動による温暖化に加えて、自然気候変動(特にエルニーニョ)による一時的な変調が、2023年に観測された記録的な世界の気温をもたらしたことを分析している。陸と海の猛暑、豪雨、干ばつと火災が生態系、人々、インフラ、経済に与えた影響は、温暖化がさらに進むたびに深刻化することになる。

この報告書の結果は、排出量を削減し、気候変動の影響に適応するために、世界のすべての国が2025年までに国連気候変動枠組条約(UNFCCC)に従って提出を約束した気候行動計画を強化する上で、情報を提供し、指針を与えるものである。

[DW編集局]