[本文]

国・地域名:
ドイツ
元記事の言語:
ドイツ語
公開機関:
マックスプランク・プラズマ物理学研究所(IPP)
元記事公開日:
2024/07/03
抄訳記事公開日:
2024/08/06

核融合開発の注目点

Brennpunkte der Kernfusion

本文:

(2024年7月3日付、マックスプランク・プラズマ物理学研究所(IPP)の標記発表の概要は以下のとおり)

2022年12月、米国のローレンス・リバモア国立研究所の国立点火施設(NIF)が核融合研究におけるブレークスルーを発表した。核融合はクリーンで尽きることのないエネルギー資源である。各国及び民間の核融合研究開発の立ち位置について、IPP研究所のコンセプトとの比較を含めて解説している。

国際熱核融合実験炉(ITER)はEU、米国、中国、インド、韓国、日本、ロシアが参加する研究プロジェクトで、IPPも参画している。ITERでは投入エネルギーの10倍の核融合エネルギーを生成する予定だが、発電はしない。発電はITERの実験の終了後に計画されているDEMOと呼ばれる実証発電所で行われるが、それまでにはまだ時間がかかりそうだ。ITERは当初2035年にエネルギーを生成する予定だったが、さらに遅れる状況にある。大規模改修の可能性も言及されている。

一方、大規模な政府支援のためか、世界中で33社が核融合に取り組み、これまで47億ドル以上の資金を集めている。スタートアップ企業は機敏に動くが、科学的および技術的な実現可能性から見るとはるかに不安定な状況にある。

IPPでは核融合開発の当初からの概念であるトカマク型とステラレータ型という両方の方式を研究している。磁場の形はトカマク型の方が単純だが、トカマク型では発電をする場合に実用上の問題が発生する。概念的にはステラレータ型の方が核融合発電に適している。しかし、ステラレータ型では磁場の最適化が難しいため、先ずトカマク型で研究を開始した。ITERの次のDEMO炉は、現在はトカマク型を計画しているが、建設開始前にステラレータ型の方が優位と分かればステラレータ型もありえる。両方の炉型で研究しているのは世界でもIPPだけであり、両炉のメリットとデメリットを追求している。

新興企業の中で、米コモンウェルス・フュージョン・システムズ社はトカマク型の設計をしている。同社はマサチューセッツ工科大学から生まれたスタートアップ企業であり、強力な磁場を発生させ小型のトカマク炉を作ろうとしているが、開発スケジュールには疑問が残る。

米TAEテクノロジーズ社はグーグルから全面的な支援を受けているが、粒子密度がまだまだ低い。また、この形では重水素と三重水素の核融合ではなく、ホウ素と陽子の核融合を目指しているが、これはまだ困難な課題である。

カナダのジェネラル・フュージョン社はトカマク型やステラレータ型における炉の壁とプラズマの接触の問題解決のため、プラズマを液体金属で囲む研究をしている。そのためにはプラズマをさらに圧縮する必要があるが、圧縮されたプラズマは不安定になる。

ジェネラル・フュージョン社は英国原子力庁と共同し、デモ用の炉を2025年に完成し、2020年代の終わり、あるいは2030年代の初めに世界で初めての商業用核融合発電所を動かすと発表している。

以上のプロジェクトはプラズマを磁場で閉じ込める方法を使っているが、これと全く異なる方式の、レーザーを使用した慣性閉じ込め核融合を追及しているのが米国立点火施設(National Ignition Facility: NIF)、ドイツのスタートアップであるマーベル・フュージョン社、およびダルムシュタット工科大学発のフォーカスト・エナジー社である。

この方式では核融合の条件は数ナノ秒という極めて短い時間しか発生せず、この状態が慣性で維持されるのでプラズマを保持する必要がない。しかし、そのためには強力なレーザーが必要だ。ドイツのスタートアップ2社では、超短波パルスレーザーをカプセルに直接照射する。フォーカスト・エナジー社は重水素と三重水素の塊にビームをあてプラズマを生成・圧縮し、それをイオンビームで点火する。この方式では強力なレーザーがいらないのでコストを削減できる。マーベル・フュージョン社の方式は明らかでない。

このように現在、いろいろな方式の研究開発が行われているが、核融合により発電が経済的に行われるかどうかはまだわからない。しかし、風力や太陽のような再生可能エネルギー源が人類のエネルギー需要を満たせるかどうかわからない中、核融合による発電は追求すべき目標である。

[DW編集局]