[本文]
-
- 国・地域名:
- ドイツ
- 元記事の言語:
- ドイツ語
- 公開機関:
- マックスプランク協会(MPG)
- 元記事公開日:
- 2024/07/05
- 抄訳記事公開日:
- 2024/08/06
-
EUにおけるドイツの優位点、輸出より国内市場の強化が必要
- 本文:
-
(2024年7月5日付、マックスプランク協会(MPG)の標記発表の概要は以下のとおり)
欧州連合(EU)は多くの人にとってアイデンティティの源であり、同時に過度に官僚的な存在である。EUは加盟国に経済面での自由をもたらすが、特にドイツがその恩恵を受けている。マックスプランク社会研究所のヘプナー教授(Prof. Dr. Martin Höpner)とバッカロ教授(Prof. Dr. Lucio Baccaro)が、ドイツが大きな恩恵を受けた理由と、なぜ路線転換が求められるのかを解説する。内容は次の3点に絞られる。
国家連合体であるEUは一般の議会制民主主義の尺度で評価することはできない。EUは国家ではなく、加盟国によって成立する多層システムの最も上に位置づけられる組織だからである。
EUは自由、とりわけ経済面での自由を創出する。EUは規則を作って市民個人の自由を強化し、安全な環境を作り上げる。
ドイツの輸出経済は域内市場と単一通貨(Euro)の利点を十分に活用することができた。長期にわたる安定性を確保するためには、ドイツは輸出より国内経済に集中するとともに、EUから独立したよりバランスの取れた経済システムを創出すべきである。EUでは1億8,000万人以上の人々が欧州議会議員の選挙で投票をし、投票率は1999年以来最高の51.08%となった。ドイツでも1984年以来最高の64.78%を記録した。本年4月に実施された調査(ユーロバロメーター)によればEU市民の3分の2以上がEUは困難な世界にあって安定した場所であると認識している。同時にEUは官僚的だとされ、ほぼ半数の市民が非民主的だと考えている。
EUの行政府である欧州委員会は議会からは選出されないない。つまり選挙で選ばれないので、市民は欧州議会議員の選挙で投票することの意義に疑問をもっている。しかし、EUは民主的に成立した加盟国により創り出された機関なので、EUがEU内の組織を民主化する必然性はない。しかし、規制の増加に対する不満は高まっており、改革案も的外れなものが多いと批判されている。
EUは個々人の自由を実現し、消費者は自由にものを選べるし、生産者は国境を越えて自由に販売できる。しかし多くの場合、代償を伴い、結果的に経済的な自由を与えられた加盟国の行動の余地を狭めている。動物愛護のように国境を越える問題がないものをなぜEUが規制をするのかが理解されない。しかし、EUの慣例を変えるためには条約改正が必要であり、事実上、困難である。EUが国境を越える事柄でない事項からの撤退を明らかにすれば、より民主的だと思われるスリムなシステムへ転換できる可能性がある。
欧州域内市場は加盟国に経済的自由をもたらすが、その最大の受益者はドイツである。戦後のドイツは貿易立国を国是とし、統一された欧州への帰属がドイツのアイデンティティの核となった。再統一後もEUと単一通貨のおかげで縮小する内需を欧州域内への輸出が相殺し、ドイツの成長を支えてきた。
しかしこのドイツのたどった道は他のEU加盟国のモデルとはならない。他の加盟国の輸出競争力は弱まっている。EUの全加盟国が強くなることでドイツも恩恵を受けるようにしなければならない。ウクライナでの戦争、エネルギー危機、新型コロナ感染症などの地政学的衝撃により輸出市場はどんどん狭くなっている。中国やロシアとの貿易関係も難しい。さらにグリーン変革やデジタル化に伴う挑戦においてドイツが頼りとする輸出主導型産業は取り残されていく。長期的に安定した成長を図るためには、輸出と内需の両方のバランスを取る必要がある。
ドイツは現下の国際競争の形が変化する中で、デジタル化のようなインフラ投資が非常に重要な領域に十分な投資をしていない。国内総生産に対する債務残高水準への影響は、成長への投資の影響と金利動向に依存する。より多くの公共投資が債務残高の増加を招くことは必ずしも明らかではない。いずれにしろドイツは、賢明なインフラ投資、さらには脱炭素化やデジタル化のために債務残高を引き上げる余裕がある。明らかなことは、経済力で力を持つドイツと、ドイツを含む欧州全体が経済的に繁栄すれば、人々のEUに対する信頼は裏切られないということである。
[DW編集局]