[本文]

国・地域名:
ドイツ
元記事の言語:
ドイツ語
公開機関:
カールスルーエ工科大学(KIT)
元記事公開日:
2024/09/19
抄訳記事公開日:
2024/10/24

量子通信:マイクロ波によるダイヤモンド量子ビットの効率的制御

Quantenkommunikation: Effiziente Ansteuerung von Diamant-Qubits mit Mikrowellen

本文:

(2024年9月19日付、カールスルーエ工科大学(KIT)の標記発表の概要は以下のとおり)

カールスルーエ工科大学(KIT)の研究者は、ドイツでは初めて、マイクロ波を用いてダイアモンド中のスズ空孔(SnV)を極めて正確に制御できることを明らかにした。スズ空孔は特異な光学的・磁気的性質を持つため、量子ビット(量子コンピュータと量子通信の最小の演算ユニット)として利用することができる。これは強力な量子コンピュータと安全な量子通信ネットワークの開発にとって重要な突破口を開いたといえる。

量子コンピュータにおける情報の基本的な単位は量子ビットであり、これが従来のデータ処理におけるビットに相当する。従来のデジタル通信では光ファイバーの中をレーザーパルスが情報を伝送していたが、量子力学では個々の光子を利用するため情報を第三者が読み取るおそれはない。光子の持つ情報を保存し、量子コンピュータで処理することに、光で操作でき読み出し可能な量子ビットは適合している。

課題は量子ビットの安定性である。その中でも最大の課題は、量子ビットの特性を十分に利用できるコヒーレンス時間(情報を安定して蓄える時間)を長くすることである。KIT物理学研究所の博士課程研究者であるカラパツァキス(Ioannis Karapatzakis)氏とイレッシュ(Jeremias Resch)氏は特殊なダイアモンド空孔(スズ空孔の中心)をどのようにしたら正確に制御できるかを研究している。この研究は、連邦教育研究省(BMBF)の支援する安全なファイバーベースの量子通信のための「量子リピーター・リンク(QR.X)」プロジェクトとダイアモンド基板を使うスピン・光子をベースとする量子コンピュータに挑むSPINNINGプロジェクトの一部である。

「ダイヤモンド中の炭素原子の格子構造における空孔は、原子が欠落している場合、あるいはスズのような他の原子が代わりに入ることによって発生する」とカラパツァキス氏は語る。光やマイクロ波によって、この空孔場所の電子スピンのような状態を意図的に制御することができるという光学的磁気的特性があるため、量子通信における安定した量子ビットとして活用することができる。「量子ビットの光学的読み出しとスペクトルの安定した性質の実現という重要な一歩を示すことができた。これにより、ダイアモンドの中のスズ空孔中心を制御できたことは、今後の安全で効率的な量子通信の更なる発展に向けた重要な突破口となる可能性を有している」とレッシュ氏は意義を語った。

[DW編集局]