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- 国・地域名:
- ドイツ
- 元記事の言語:
- ドイツ語
- 公開機関:
- ヘルムホルツ協会持続可能性研究所(RIFS)
- 元記事公開日:
- 2024/09/03
- 抄訳記事公開日:
- 2024/10/29
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炭素回収・貯留の是非から方法へ:炭素回収と貯留を巡る活発な議論の展開
Vom Ob zum Wie: Die dynamische Entwicklung der Diskussion um Carbon Capture and Storage
- 本文:
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(2024年9月3日付、ヘルムホルツ協会持続可能性研究所(RIFS)の標記発表の概要は以下のとおり)
ドイツは2045年までに気候中立を目指している。8月に閣議決定した炭素管理戦略に基づき連邦政府はいくつかの地域で二酸化炭素の地中貯蔵を許可したいと考えている。2000年代には炭素回収・貯留(CCS)導入計画は激しい抵抗に直面した。方向転換はなぜ生じたのか、またこの動きにどのような社会政策上の危険が関係するかについて、RIFSとウィーン大学の研究者が調査を行った。
2000年代、CCS計画は主にRWE社のような石炭企業によって進められていた。政治的には同盟90/緑の党と左翼党が明確に反対し、自由民主党(FDP)とドイツキリスト教民主同盟(CDU)/キリスト教社会同盟(CSU)は当初賛成し、ドイツ社会民主党(SPD)も概ね前向きだった。しかし2009年にシュレースヴィッヒ・ホルシュタイン州でRWE社が住民に伝えることなく、貯留候補地調査のため爆薬を使った調査を行ったことによる住民の抗議が広まり、同州政府はCCSへの支持をとりやめた。
CCSを巡っては近年、新たな動きがみえる。第一に、新型コロナ感染症の一時期を除いて、世界的に温室効果ガス排出量が毎年増えて気候危機が深刻化している。第二に、気候変動の深刻化に伴い、2010年代後期以降、気候科学やフライデーズ・フォー・フューチャーなどの運動により、政治的動きが強まっている。第三に、気候変動の激化とその政治化が、野心的な世界的気候政策の実現を促している。そして第四に、2019年の気候保護法に基づき連邦政府が2021年に目標を強化し、2030年までに二酸化炭素ガス排出量の65%削減、2045年までにネット・ゼロ排出の達成を定めたことにより、セメント、鉄鋼、化学、自動車のような業界も排出量の大幅な削減を求められることになった。
ここで問題となるのは、気候中立のシナリオと炭素管理戦略をどのように両立させるかである。「ここでの課題は、間違った方向へのレールを引く危険があることだ。一方的に新しい技術に頼るのではなく、充足性、つまりより倹約的な繁栄モデルについて議論していくべきである。気候に悪影響を与える生産の量を減らせば、残留排出物の量も減らすことができる。」とRIFSのハース研究員は語る。ドイツでも、世界においても、CCSが化石燃料の段階的廃止を遅らせることがあってはならない。
[DW編集局]