[本文]

国・地域名:
ドイツ
元記事の言語:
ドイツ語
公開機関:
キール世界経済研究所(IfW Kiel)
元記事公開日:
2024/09/13
抄訳記事公開日:
2024/10/31

ドイツの遅すぎる軍備力強化

Angesichts der russischen Aufrüstung muss Deutschland viel stärker in seine militärische Abschreckung investieren, sagen Forschende – und formulieren Empfehlungen an die Politik.

本文:

(2024年9月13日付、キール世界経済研究所(IfW Kiel)の標記発表の概要は以下のとおり)

ロシアの軍備力増強に直面するドイツはもっと強力に軍備の強化を図らなければならない、と研究者が政策提言を発表した。時代の転換期との美辞麗句にもかかわらず、ドイツとロシアの軍事力の差は拡大している。ドイツ連邦軍に対する現政権の支出は、現在のロシアによる脅威と数十年にわたる軍縮の後では、全く不十分である。現在の調達率からすると、20年前の状態に追いつくまで100年近くはかかる。近代的な兵器システムを含め、大幅に増強されたロシアの兵器生産能力は際立っており、ドイツのすべての兵器を生産するのに半年はかからない。この状況をIfW Kielの報告書と、「軍備調達トラッカー」と名付けられた新たなデータベースが示している。

「欧州が今必要としていることは一時的な大きな資金ではなく、通常のドイツの国防費を最低でもGDPの2%(2%はNATOの目標)とする継続的な、大幅な、即座の増額である。ロシアの侵略に鑑みると、これまでと同じやり方は怠慢かつ無責任である。」とIfW Kielのグントラム・ヴォルフ・フェローは語る。

2023年以降、現政権は約900億ユーロに相当する軍需品を発注するようになったが、報告書著者らは国防への取り組みが相変わらず野心さに欠けていると非難している。現在の公共調達のテンポでは、2004年の連邦軍の装備状況に戻るためには、戦闘機で15年、戦車で40年、そして砲榴弾に至っては100年近くかかることになる。

これに対してロシアは現在のドイツ連邦軍の装備全体の量をたった半年で製造することができる。ロシアはウクライナへの侵攻以来、重要な兵器システムの生産能力を高め、長距離防空能力を2倍に、戦車では3倍とした。

北朝鮮の支援によりロシアは毎日1万発の弾薬(手榴弾とロケット弾)を打ち込むことができる。無人ドローンの生産能力は6倍以上となった。超音速・極超音速ミサイルを備えたロシアの兵器とノウハウは、NATOにとって高い安全保障上のリスクである。ウクライナで停戦が実現すると、ロシアの軍需装備は例をみない速さで増えると見込まれる。

IfW Kielのモリッツ・シュラリック所長は、「転換期という表現は意味のない言葉だった。平和は、モスクワの政治当局が欧州に対する侵略戦争は軍事的勝利をもたらさないことを理解した時に初めて訪れる。ドイツと欧州は、信頼できる軍事力が必要である。そのためにドイツは、毎年少なくとも1,000億ユーロの国防予算を確保する必要がある。」と語っている。

報告書は6つの具体的な提言を行い、長期にわたる、欧州内で調整された装備戦略を求めている。

[DW編集局]