[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
高等教育・研究省(MESR)
元記事公開日:
2024/10/21
抄訳記事公開日:
2024/11/25

フランスにおける乳がん研究の最新状況

Cancer du sein : où en est la recherche en France ?

本文:

(2024年10月21日付、高等教育・研究省(MESR)の標記記事の概要は以下のとおり)

乳がん発症後の生存率は年々改善されてきているが、依然として、女性のがん関連死亡の主な死因である。放射線医学、核医学、人工知能(AI)、標的治療など、乳がんの予防と治療を向上させるためのフランスの研究の最先端はどうなっているか。

まず現状では、毎年6万1,000人、つまりフランス女性の8人に1人が乳がんを患い、女性のがんによる死因の第一位となっている。一方、研究の進歩により乳がん患者10人のうち9人が5年経過した後も生存している。

▽がん検出の改善
検診が早ければ早いほど、5年生存率は99%に近づく。そのため予防が腫瘍学研究の主な目的の1つとなっている。

進行性乳がんの検出に関する研究では、乳腺細胞がトリプルネガティブ乳がんに変化する過程を解明し、各々の細胞のIDカードを作成して、変化の過程にある細胞を検出し、腫瘍になる前に阻止することを目指す。開発されるツールにより、生検や血液検査でより早期にさらに上流のマーカーを特定できる可能性がある。国立科学研究センター(CNRS)分子生物物理研究所のチームが挑戦する画像による早期診断では、開発した新しい磁気共鳴画像法(MRI)プローブで、より小さな乳房腫瘍を非常に鮮明に視覚化でき、早期発見だけでなく、がんの進行をより良く理解することができる。

▽病気の解明のための最新技術
国立保健医学研究所(INSERM)の研究チームは、乳がん患者の血液中に2次がん発症リスクに関わる特定のマイクロRNAを特定した。これにより、がん細胞の振る舞いに関わる分子メカニズムをより良く理解することができる。また、マイクロRNAを活用してがんの転移リスクを早期に予測し、新しい治療戦略に活かすことができる。

また現在の核医学には、「放射性トレーサー」という、弱放射性分子を静脈内に注射し、患者の体内に拡散させ、画像化し、体内の腫瘍と転移を検出する方法がある。キュリー研究所の医師がフランスで初めて使用した非常に有望な新しいトレーサーは、腫瘍微小環境内にある特定の細胞に付着し、転移をより的確に特定し、治療の有効性の評価と予測、および再発の早期発見を可能にする。

▽治療とがんモニタリングの個別化
INSERMグルノーブルのがん転移阻止の研究チームは、発見した乳がん細胞の転移に関する分子メカニズムを発見し、転移を防ぐ可能性を示した。キュリー研究所がパリ科学人文学大学(PSL)とINSERMとともに立ち上げた「女性がん研究所」によるトリプルネガティブ乳がんに対する臨床研究では、免疫療法と化学療法を組み合わせた、新しい治療法の開発と再発の検出が目指されている。

患者の病理標本のデジタル画像データを分析するため、AIを活用した機械学習モデルを構築するコンソーシアムPortrAItのプロジェクトは、診断・治療にAIを活用する上でフランスを世界のリーダーとすることを目的とする。このより効果的な診断ツールは、患者の個々のニーズに合わせた治療を早期に適切に行い、また腫瘍医による個別化治療に役立つ。

リキッドバイオプシーという乳がんを追跡する革新的な技術は、多くの患者に適用可能な大きな進歩である。従来の生検と違って、簡単な血液検査で腫瘍由来の異常DNAを検出し、がんの進行を観察し、また分子レベルでのがんの状況を把握して標的療法や早期発見を可能とする。

▽「パリ=サクレーがんクラスター」
「フランス2030」の一環として2022年に発足したバイオクラスターであり、がん研究イノベーション機関を結集し、真の大規模イノベーション・エコシステムの発展を促進し、フランスの生物医学研究の現状を変革することを目指している。

[DW編集局]