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- 国・地域名:
- ドイツ
- 元記事の言語:
- ドイツ語
- 公開機関:
- ライプニッツ協会心理学研究所(ZPID)
- 元記事公開日:
- 2024/11/01
- 抄訳記事公開日:
- 2024/12/05
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フェイクニュースがいかにエネルギー転換を遅らせるか
- 本文:
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(2024年11月1日付、ライプニッツ協会心理学研究所(ZPID)の標記発表の概要は以下のとおり)
風力発電に対する誤った情報が広く拡散している。これは知識が欠けているというより、世界観によるところが大きい、と研究結果が示唆している。風力発電は健康を害するばかりでなく、経済的にも非効率であるというような誤った情報が風力発電の社会への受入れを難しくしている。しかも誤った情報は世界中で広まっており、幅広く同意を得ている。
ホーエンハイム大学が参加してシュトゥットガルトで行った代表的な調査では、回答者の4分の1以上が多くの誤った情報に同意している。これは回答者の世界観によるところが大きく、知識が欠けているというわけではない。そのため、事実に基づいた議論を難しくしている。風力エネルギーの拡大はエネルギー転換と持続性のための変革の重要な役割を担っている。調査結果はネイチャー・コミュニケーションズで公開されている。 (https://doi.org/10.1038/s41467-024-53278-2)
気候目標を達成し、二酸化炭素の排出量を削減するために、多くの国は風力エネルギーの拡大に力をいれている。風力利用についての客観的な賛否の議論と同時に、誤った、あるいは誤解を招く議論も広まっている。「これまで、どの程度の人々が風力発電についての誤った情報を鵜呑みにしているのかということはあまり知られていなかった。」と本プロジェクトのリーダーであり、ホーエンハイム大学持続性行動と経済専攻に所属するヴィンター博士(Dr. Kevin Winter)は語る。
オーストラリア、英国および米国における代表的な調査では、回答者の4分の1以上が風力発電についての誤った情報、あるいは誤解を招く多くの言説に同意している。約20%の回答者は風力発電による健康への被害を信じている。さらに約40%の人々は風力エネルギーの拡大には秘密の陰謀や操作された情報があると考えている。「驚いたことに、全く異なるテーマについての誤った考えへの同意が同じ人々からされていることである。」とライプニッツ協会心理学研究所のサッセンベルク教授(Prof. Kai Sassenberg)は話す。このことは風力発電拡大の政策措置に対する同意の少なさや、建設に反対する抗議活動にも反映されてくる。
調査結果はさらに、風力発電についての誤った情報への同意は何よりも個人の世界観によっていることを示している。特に問題なのは陰謀論的世界観である。社会での出来事の背後に陰謀があるのではと考える人は、誤った情報に同意する傾向がある。一方、豊富な科学的知識を持っていても誤った情報への同意を減らすわけではない。回答者の教育レベルは何の影響も与えない。「人々の世界観に適合しない限り、客観的事実を提示するだけでは、誤った情報に対峙することは困難だ。」とヴィンター博士は最後に語る。否定的対応を取る人々を説得するためには個人的な利益(例えば金銭的な利益)を提示する方がより効果的かもしれない。
[DW編集局]