[本文]
-
- 国・地域名:
- フランス
- 元記事の言語:
- フランス語
- 公開機関:
- 首相府
- 元記事公開日:
- 2024/12/13
- 抄訳記事公開日:
- 2024/12/17
-
新首相にバイルー氏
- 本文:
-
フランスのマクロン大統領は13日、首相を辞任したミシェル・バルニエ氏の後継に、フランソワ・バイルー氏(M. François BAYROU)(中道政党「民主運動」)を指名し、組閣を命じた。同日中にバルニエ氏から権限が委譲された。近く新閣僚を発表する見込み。
◇
<解説>
バルニエ前首相は中道右派政党「共和党」出身で、9月に就任したばかりだが、来年度予算案の国会審議などをめぐり、下院最大勢力の左派連合が不信任案を提出。これに第三党である極右政党が賛同して同案が可決したことを受け、わずか3か月で辞任した。フランスの首相の不信任案決議は1962年以来62年ぶり。また今年に入ってからのフランスの首相辞任は、移民法案をめぐる国会審議の紛糾で引責したエリザベット・ボルヌ氏(1月)、下院総選挙での与党敗北の責任を取ったガブリエル・アタル氏(7月に辞意表明、9月に辞任)に次いで3人目で、フランス政局は異例の混乱にあるといってもよい。
今回の首相交代は、6~7月の下院総選挙の結果やその後の政局に起因する。1回目の投票で極右政党「国民連合」(RN)が勢力を伸ばして第一党になる可能性が出たため、これを阻止しようと、マクロン大統領率いる与党「アンサンブル」と左派連合「新国民戦線」(NFP)が急きょ連携し、全国の大半の選挙区で候補者を一本化した。その結果、RNは決選投票で躍進を阻まれ、第三党へと失速。代わってNFPが最大勢力となった。しかしマクロン氏は、RNからはもちろん、NFPからも首相指名を頑なに拒み続けた。その状況で9月に首相に選ばれたバルニエ氏は、当初からNFPとRNの”板挟み”状態に置かれ、舵取りの難航が予想されていた。
バイルー新首相はかつてミッテラン政権やシラク政権で複数の閣僚ポストを歴任し、2007年の大統領選挙にも立候補したベテランの中道政治家だが、近年はマクロン大統領率いる与党に協力しており、今後どれほどNFPやRNなどを取りまとめられるかは未知数だ。今回、政治的な立場が全く違うはずのNFPとRNが首相の不信任決議でタッグを組んだ事実には批判も根強いが、議会勢力図が変わっていない以上、今後も同様のことが起こる可能性はある。また折からの財政難に伴う緊縮財政の必要性や、それに起因する国会審議の難渋は、誰が首相になっても変わることがない。今回のバイルー首相就任により政局の混乱が落ち着く期待値は低いといえる。
(フランス担当フェロー・内田遼)
[DW編集局]