[本文]

国・地域名:
ドイツ
元記事の言語:
ドイツ語
公開機関:
ドイツ研究振興協会(DFG)
元記事公開日:
2024/11/25
抄訳記事公開日:
2025/01/23

ドイツ研究振興協会(DFG)ファンディング・アトラス2024発表

DFG stellt „Förderatlas 2024“ vor: Kennzahlen als wissenschaftspolitische Informationsquelle und Entscheidungshilfe

本文:

(2024年11月25日付、ドイツ研究振興協会(DFG)の標記発表の概要は以下のとおり)

DFGは同日、ドイツ大学学長会議(HRK)および科学助成財団連盟(Stifterverband)と共同で「ファンディング・アトラス2024(Förderatlas 2024)」を公表した。この総覧はドイツの研究に対する公的支援の全体像をとりまとめたもので、1997年以来3年毎に発行されている。今回の総覧は2020年から2022年までを対象としている。以下、総覧における主要な事項を掲載する。

大学の財源には公的基礎資金と外部資金があるが、2019年と比較していずれも2022年の金額は増加している。公的基礎資金は2022年には約267億ユーロとなり、2019年と比べて30億ユーロ多く12.9%の増加である。

外部資金も104億ユーロとなり、2019年比で17億ユーロ、19.1%増加した。これに対し、DFGのベッカー会長は「国際競争にさらされ、人件費の上昇にも直面する大学の需要を満たすには、この上昇率では十分ではない。また、大学に対する第三者資金の増加が公的基礎資金の上昇を上回り、第三者資金の割合が26.9%から28%に上昇したことは問題である。第三者資金は地方、国内、国際面での大学の存在価値を高めるための意義はあるが、十分な基礎的資金があってこそ科学研究の発展と競争力の強化を図ることができる」と述べている。

連邦政府による外部資金の拠出額は、2019年は外部資金全体の29%であったが、2022年には31.4%に上昇し首位となった。DFGは、2019年には31.5%で第一位であったが、今回は30.3%で二位となった。産業界の資金提供の割合は低下し続けている。2006年には26%、2019年には17.4%だったものが、2022年には14.7%まで減少した。

「産業界は研究の成果を実利用に転換する中心的役割を担っているにも関わらず、このような減少をみるのは極めて憂慮すべき事態である。科学と経済は成長と繁栄、そして国家の将来の競争力の為の強力なパートナーでなければならない」とベッカー会長は述べた。

総覧の第二の重点は公的資金による研究の国際化にあてられている。ドイツは、EUの研究イノベーション枠組み計画、いわゆるHorizon Europeにおいて、2021/2022年に40億ユーロ以上の支援を獲得している(フランスは28億ユーロ、スペインは27億ユーロ)、また欧州研究評議会(ERC)から515のプロジェクトを獲得している(フランスは308、オランダは254)。ドイツの大学の国際競争力は、以上のことから明らかである。DFGへの応募中の案件をみると約20%の国際協力案件が存在すること、またDFGの大型の共同プロジェクトに携わっている研究者については、すでに外国で研究をしていた経験者がやはり約20%いることも好事例である。

国際科学協力と、政治やその他の世界の課題とのかかわりが増大している。英国のEU脱退の直後、それまではドイツに次いで第二位だったEUの英国への研究支援が、全くなくなったこともその例である。コロナ期における中国の封鎖政策の影響で、DFGのプロジェクトにおける独中協力の計画は激減した。ロシアのウクライナ侵攻によりロシアとの協力の計画は完全に停止した。

この他、総覧ではDFGの資金提供のランキングを大学別、専門分野別、州別などにわけて公表している。

これまでの総覧を振り返ると、「競争」、「知名度の向上」、「地域・国全体での協力とネットワーキング」、「国際化」という4つのテーマは密接に関係していることが分かる。「資金提供に関するデータを見ると、単なる第三者による資金のランキングを越えて、多面的な分析を可能とする潜在的な力を有していることが明らかになっている」とDFGのアーレンス事務局長は語っている。

[DW編集局]