[本文]

国・地域名:
ドイツ
元記事の言語:
ドイツ語
公開機関:
ユーリッヒ研究センター(FZJ)
元記事公開日:
2025/01/13
抄訳記事公開日:
2025/02/07

量子物理学の100年:想像を超える進歩

Die Wissenschaft des Unvorstellbaren - 100 Jahre Quantenphysik

本文:

(2025年1月13日付、ユーリッヒ研究センター(FZJ)の標記発表の概要は以下のとおり)

量子力学の数学的定式化から100年となる2025年を、国連は「国際量子科学・量子技術年」と宣言した。FZJの量子物理学者カラルコ(Tommaso Calarco)教授もドイツにおけるキックオフイベントに参加し、科学、産業、政治の代表者たちと量子力学のトピックについて話し合う予定である。このインタビューでは、過去100年間の発展、FZJでの量子技術研究、今後数年間での進歩の見通しについて述べる。

量子物理学と古典物理学の違いは?:
量子物理学では、原子、電子、光子などの最小の粒子を扱い、その振る舞いを数学的に記述する。古典物理学との違いは、原子は同時に2つの異なる場所に存在する可能性があることである。ノーベル賞受賞者3名は、量子物理学の法則を実験で繰り返し確認し、量子技術の新時代の礎を築いてきた。

量子物理学はこの100年間で人々の日常生活にどのような影響を与えてきたのか:
すべての情報技術はエレクトロニクスやフォトニクスを基盤としており、量子コヒーレント光を使用して、地球規模で情報を伝達している。これらの開発は、最小の粒子の振る舞いと、影響を理解することができなければ考えられない。応用例としては、トランジスタ、コンピュータ・プロセッサ、レーザーなどがあり、情報伝送だけではなく医療や診断にも使用されている。

FZJでは、科学者が新しい量子技術を研究しているが、それがユニークな理由とは?:
量子コンピュータの最初のプロトタイプをユーリッヒ・スーパーコンピューティングセンターのハイパフォーマンス・コンピューティング環境に統合することができた。これにより初期の特定アプリケーションにプロトタイプを使用し、科学や産業界の関係者が利用出来るようにしたことが、ユニークなセールスポイントである。

量子力学は次の100年間で技術開発にどのような影響を与えるであろうか?:
今後は、人工知能(AI)アプリケーションを含むコンピューティング・プロセスの加速が期待できる。個々の光子の伝送による安全な通信の実現も考えられる。センサー技術では、多くの測定がはるかに精確になる可能性があるため、個々のニューロンの活動をリアルタイムで測定できるようになり、診断に新たに可能性が生まれる。計時の精度も向上し、現在のメートル単位からセンチメートル単位またはミリメートル単位までの衛星ナビゲーションが可能となり、これは自動運転にとって重要な側面である。しかし将来、これらの技術を活用できるようにするためには、克服すべき大きな課題が存在している。

[DW編集局]