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- 国・地域名:
- ドイツ
- 元記事の言語:
- ドイツ語
- 公開機関:
- マックスプランク協会(MPG)
- 元記事公開日:
- 2025/01/16
- 抄訳記事公開日:
- 2025/02/14
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法律だけでオンラインの民主的議論の文化を守るには限界がある
- 本文:
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(2025年1月16日付、マックスプランク協会(MPG)の標記発表の概要は以下のとおり)
米国のIT大手メタ(Meta)は、今後は削除するコンテンツを減らし、ファクトチェックをプラットフォーム上のコミュニティに任せたいと考えている。フェイスブックは、新しいユーザールール「コミュニティ・ガイドライン」により、グループや政治的見解に対する誹謗中傷を許可し、「検閲」を終わりにしたいと考えている。MPGの外国公法・国際法研究所のプラットフォーム専門家で、弁護士でもあるトゥハトフェルト(Erik Tuchtfeld)氏は、メタのCEOが認識していないこと、そして新しい概念を持つ強力な欧州連合(EU)が如何に重要であるかを説明している。
先週、メタのザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)氏は、様々なメタプラットフォームにおけるコンテンツ・モデレーション(投稿監視)の根本的な方向転換を発表した。
欧州委員会(EC)は、メタに対して訴訟を起こすことをすでに発表している。デジタルサービス法(DSA)がプラットフォーム所有者の私的な権力を抑制したとしても、法律だけではオンライン上の議論の文化を救うことはできない。必要なことは、民主的な議論と公益にコミットする代替の場所をデジタル空間に構築することである。
私的権力の限界としての法律:
メタのコミュニティ基準は、最大かつ最も重要な公共の場所デジタルプラットフォームであるインスタグラムやフェイスブックなどの私的な権利である。米国とは異なり、DSAは、コンテンツが法律やコミュニティの基準に違反しない限り、プラットフォームによるコンテンツの恣意的な削除からユーザーを保護する。つまりEUの規制は、自由を制限するどころか、法律を通してプラットフォームに対するユーザーの自由を生み出している。公共の言論を規制する法律の限界:
EU加盟国の国内法で違法なコンテンツの場合、DSAは、その強みを証明することが出来るが、民主的な議論の文化を実現するには十分ではない。一方、ソーシャルネットワーク上には、「合法であるが内容がひどい」不快で有害なコンテンツがたくさん存在している。
DSAの中心的な規定は、プラットフォームの監視行動を規制するものではなく、研究者がプラットフォームのデータにアクセスして、民主的な議論に与える影響について独立した研究を行う権利である。現時点では、未だ主に認識の段階にあるが、基準が適用される前に十分なものとしておく必要がある。
欧州には代替手段が必要:
DSAは、プラットフォームの枠組みを規定するが、少なくとも短期的には、対症療法以上のことは期待できない。欧州は権力の集中にもっと注意を払う必要がある。デジタル空間においても、IT大手の中央集権的なプラットフォームの代替となるものを、すなわち利益志向ではなく公共の利益を志向し、民主的な意思決定構造を持ち、地域によって異なるルールが欧州社会の多様性を反映したものを構築する必要がある。すなわち欧州版フェイスブックを開発するのではなく、社会的に埋め込まれた異なるデジタルな公共スペースのビジョンを開発することである。
[DW編集局]