[本文]
-
- 国・地域名:
- フランス
- 元記事の言語:
- フランス語
- 公開機関:
- 国立科学研究センター(CNRS)
- 元記事公開日:
- 2025/01/22
- 抄訳記事公開日:
- 2025/02/18
-
フランスは海を救うために科学に賭ける
- 本文:
-
(2025年1月22日付、国立科学研究センター(CNRS)の標記記事の概要は、以下のとおり)
CNRSは「海の年2025年」の一環として、海に特化した科学的および政治的イベントの情報を提供し、博士課程学生、各国の主導的研究者から見た海洋問題に焦点を当てる。
海洋は気候を調節し、生物多様性を育み、人類にとって不可欠な資源であるが、今日、乱獲、プラスチック汚染、深海の開発と酸性化という問題に直面している。フランスの排他的経済水域(EEZ)は1,090万平方キロメートルと世界第2位を誇っており、政策決定者は、この重要なエコシステムを維持するための戦略を、将来の変化の予測に基づいて再構築する必要がある。
現在、CNRSは、他の研究機関と協力して政府の5か年投融資計画「フランス2030」における海洋に直接関連する以下の4つの国家研究プログラムを共同運営している。
これらのプログラムは、いわゆる社会生態学的レジリエンスに注目している。これは海洋環境が攪乱され、気候変動に対する海洋の調節能力が損なわれる中で、自然環境と人間社会からなるシステムが変化しても、その本質的な機能を維持しながら適応し、変革する能力である。
▽「ブリッジ(BRIDGES)」プログラムは、地域紛争のリスク軽減を目指して、南西インド洋の資源を持続的に管理に取り組む。CNRS、国立海洋開発研究所(IFREMER)および国立開発研究所(IRD)が協力。10年間で2,831万ユーロを投じ、気候、資源等を統合する新しい観測能力の開発、人工知能を活用した継続的観測ツールの開発、社会生態学的システムのモデル化、気候変動の影響に対する脆弱性の予測と紛争リスク特定、近隣諸国との公平かつ全体的なガバナンスの枠組みの変革を進める。
▽「海洋と気候」プログラムは、生態系をより良く理解し、より効果的に保護するため、CNRSとIFREMERが協力する。6年間で4,000万ユーロを費やし、海外領土における気候変動の影響の予測、海洋環境の保護と回復力の向上、海洋資源の持続可能な利用、海洋環境における環境ストレス要因の評価、革新的な観測とモデル化プログラムの開発、およびこれらの研究成果の一般市民への普及を行う。具体的には、海外領土の気候変動に関連する極端な事象の管理、とくに熱波の発生時における警告、海岸侵食に関連する社会経済的問題の提起、気候変動に対する大都市圏での脆弱な地域のマッピング等に応用される。
▽「深海底」プログラムは、深海底の持続可能な保護と利用を促進する上で必要となる知見を得るため、CNRS、IFREMERおよびIRDが協力。9年間で5,000万ユーロを投じ、生命科学、地球科学、人間科学および社会科学を組み合わせた、新しい複合的、学際的、横断的研究コンソーシアムを創設する。
▽「アトラシー(ATLASea)」プログラムは、フランスのEEZ内の4,500の海洋生物のゲノム配列を解読し、生物多様性を研究して、より適切に保護するため、CNRSと原子力・代替エネルギー庁(CEA)が協業。8年間で4,123万ユーロを投資し、海洋生物に関する参照ゲノムデータベースを取得し、産業や医療に役立つ生物学的機能を同定し、外来種の研究を進める。このプログラムは、微細藻類からのバイオベースの代替品を生産し、藻類が作る酵素合成を再現するなど民間部門にも影響を与える広範な枠組みとして好例である。
[DW編集局]