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- 国・地域名:
- フランス
- 元記事の言語:
- フランス語
- 公開機関:
- 原子力・代替エネルギー庁(CEA)
- 元記事公開日:
- 2025/01/28
- 抄訳記事公開日:
- 2025/02/20
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FRATHEAプロジェクト:新しい放射線治療FLASHがキュリー研究所で開始
FRATHEA : la nouvelle ère de la radiothérapie FLASH s’ouvre à l’Institut Curie
- 本文:
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(2025年1月28日付、原子力・代替エネルギー庁(CEA)の標記記事の概要は、以下のとおり)
キュリー研究所が主導し、CEAと協力して進めるFRATHEA(Flash RAdiation THerapy Electron Acceleration)プロジェクトは、パリ近郊オルセーのキュリー研究所病院の中心部に超高エネルギー電子ビーム(VHEE)照射器を設置し、放射線治療FLASH-VHEEの有効性と安全性を実証するものである。このプロジェクトは、世界で唯一のプラットフォームを備え、予後不良のがん患者を対象とした最初の臨床試験を2028年までに開始することを目的としている。
この技術は、難治性のがんを治療し、抗がん治療の後遺症を減らし、治療の負担を軽くし、治療期間を短縮することができる画期的な技術で、政府の投融資計画「フランス2030」とイル=ド=フランス地域圏政府の資金提供を受ける。
2050年には世界中で3,500万人以上のがんの新規症例が発生すると予想され、2022年に推定された2,000万人と比較して77%増加すると見込まれている。この状況は、公衆衛生上、国際的に重大な懸念となっており、新たな治療の選択肢を必要としている。
◇キュリー研究所で発見された放射線療法FLASH
革新的な放射線治療技術は有望な手段の1つであり、キュリー研究所で発見されたFLASH(超高線量率:ultra-haut débit de doses)の効果(非常に強い放射線を非常に短時間で照射して従来の放射線治療と同様の抗腫瘍効果が得られること)は革命的であり、非常に強い光線(従来の2グレイと比較して約10グレイ)を1秒未満(100ミリ秒未満)で照射して腫瘍細胞を破壊し、健康な組織を温存する。この効果は、キュリー研究所の科学者の10年以上にわたるこの新しい放射線治療法に関する多くの科学的蓄積がもたらすものであるが、低エネルギーの電子線には腫瘍に深く到達する能力がないという大きな課題があった。
このため、キュリー研究所はFLASHと超高エネルギー電子(VHEE:very high energy electron)による放射線療法を組み合わせることとし、これにより深部腫瘍の治療において有利な物理的および生物学的特性を発揮させて精確性を高め、以前は困難であった重要な臓器の近くに位置する予後不良のがんを標的にすることができるようになった。
この新しいビームは、大量のエネルギーを必要とし、かつ超高速であるため、CEAの緊密な協力が必要となった。この協力活動では、新しい照射器によって供給される線量を制御するための線量測定方法の開発、規制当局(ASNR)に対する安全性と有効性の実証、革新的な測定器の設計、放射線生物学的共同研究が行われる。
このプロジェクトには、4年間で3,700万ユーロの資金提供がなされる。内訳は、政府の5か年投融資計画「フランス2030」のうち医療部門に特化した「医療イノベーション2030」計画から3,500万ユーロ、イル=ド=フランス地域圏政府の「Grands lieux d’innovation」(GLI)スキームから200万ユーロ(2023年)となっている。
プロジェクトの段階は、以下のとおり。
▽第一段階:キュリー研究所の病院敷地の中心部にFLASH-VHEE医療用照射器を建設および設置するための産業パートナーの選定(2025年夏の予定)。
▽第二段階:FLASH-VHEE照射器の建設、組み立て、設置。
▽最終段階:FLASH-VHEE放射線療法の安全性と有効性を実証するための前臨床試験の実施。
[DW編集局]