[本文]

国・地域名:
ドイツ
元記事の言語:
ドイツ語
公開機関:
マックスプランク協会(MPG)
元記事公開日:
2025/02/03
抄訳記事公開日:
2025/03/18

マックスプランク協会が量子力学100周年を祝う

100 Jahre Quantensprung

本文:

(2025年2月3日付、マックスプランク協会(MPG)の標記発表の概要は以下のとおり)

マックスプランク協会は量子力学の長い伝統を振り返り、百周年記念のさまざまなプログラムを実施する。

2025年2月4日、パリのユネスコ本部で国際量子科学技術年が開幕したほか、ドイツ物理学会も量子力学100周年を祝う。この分野の研究はマックス・プランクとヴェルナー・ハイゼンベルクが密に関係している。量子力学なくして現代のコンピューターやスマートフォンは考えられなかったであろう。そのため、最も小さい世界がどのように成り立っているのかを知りたいプロもアマも含めたすべての人に向けて、いくつものマックスプランク研究所が広範囲なプログラムを用意している。

量子力学は現代物理学の基盤理論をなす。その基本原理はマックス・プランクが1900年に提唱した。光のエネルギー、すなわち電磁放射は量子化できるとした。光は、どの色、どの周波数の光も、それぞれ、多くの同一のエネルギーの集合から成り立っている。量子力学は微小世界、原子とその構成要素についての理論であり、実験によって証明されている。そして、光が原子の中でどう生成され、原子とどのように相互作用をするかを説明する。量子力学がなければスマートフォンもコンピューターも生まれず、いわんや現代の宇宙物理学も量子コンピューターもありえない。

マックス・プランクと、後にヴェルナー・ハイゼンベルクが量子力学の最初の公式を作り上げた。マックス・プランクは既に1900年に量子についての構想を展開し、そこにマックスプランク物理学研究所の所長であったヴェルナー・ハイゼンベルクが1925年にゲッティンゲンにおいて新たな量子物理学を導入した。その目的は、原子を光の明るさや周波数のような観察可能な数値だけで表わす理論を打ち立てることであった。マックス・ボルン、パスカル・ジョーダン、ヴェルナー・ハイゼンベルクがこれを数学理論に取り入れることにより、その後の研究は急速に進展した。

同じ1925年、天文学者セシリア・ヘレナ・ペイン・ガポシュキンは新たな理論的知識を利用して、新しい歴史を切り開いた。彼女の理論では、水素原子を回る電子は離散的エネルギー状態を行き来し、その差に相当するエネルギーを光として放出する。ペイン・ガポシュキンは恒星から出ている水素原子の特徴的な光を、分光器を用いて観察し、現代天文学の基礎を築いた。彼女の計算によれば星は大部分、水素原子から成り立っている。ずっと下って1951年になって初めて、電波望遠鏡を用いて、水素原子が私たちの存在する銀河系全体に存在することが証明された。量子力学とそれを極めた科学者がいなければ私たちは今なお、全宇宙において最も多く存在する物質が水素原子であることは知らなかったであろう。

そして今日でも量子の世界を探求する研究は続いている。多くのマックスプランク研究所で科学者たちは宇宙からの高エネルギー粒子放射線や量子コンピューターの研究を行い、光の本質を究めようとしている。2023年には数アト秒刻みで動くレーザーパルスを作り出し、それを用いて個々の電子の動きを追跡できる研究によりフェレンス・クラウスがノーベル物理学賞を受賞した。さらに今日の物理学者と数学者が苦労している課題に量子重力がある。量子重力とは、アインシュタインのいう重力、すなわち大きなものの理論と、小さな粒子についての量子理論を結びつける試みである。これができれば、多くの質量が一点に集中するブラックホールやビッグバンの直前のような状態を数学的に記述できることになる。

ゲッティンゲンから始まった刺激的な研究の旅は100年たった今でも終わっていない。これが、多くのマックスプランク研究所が、2025年を通して、人々に科学を身近なものに感じてもらおうとしている理由である。今年は、ミュンヘンのマックスプランク物理学研究所が開催する人気科学シリーズ「カフェと宇宙」、エアランゲンのマックスプランク光物理学研究所が10月25日に行う「科学の長い夜」、やはり10月にハイデルベルクのマックスプランク核物理学研究所が学校生徒のために行う(宇宙)素粒子物理学に関する講座、などがある。

[DW編集局]