[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
高等教育・研究省(MESR)
元記事公開日:
2025/02/17
抄訳記事公開日:
2025/03/24

精神医学を変革する研究プログラム「PROPSY」(連載、全2回中の2回目)

PROPSY, le programme de recherche qui va transformer la psychiatrie

本文:

(2025年3月21日公開記事「精神医学を変革する研究プログラム「PROPSY」(全2回中の1回目)」の続き)

■「PROPSY」について

◇このプログラムの目的は以下のとおり。

– 診断と治療の向上:均質な患者サブグループを特定して、個別化されたアプローチを開発すること
– 精神医学の研究とイノベーションの強化:精神疾患に特化した生物医学分野を体系的に構築すること
– 新しい人材の育成と確保:メンタルヘルス関連の専門職の魅力を高めること

◇このプログラムは、精密精神医学を通じて主要な精神疾患の治療を変革することを目的としている。対象とする病態は以下のとおり。
– 双極性障害(躁うつ病)
– 治療抵抗性うつ病
– 統合失調症
– 知的障害のない自閉症スペクトラム障害

◇このプログラムでは、全国的な患者コホートを構築するフレンチマインド(French Minds)が有する2,500人の患者と500件の対照群を扱う5分野13プロジェクトに、7年間で8,000万ユーロが投入される。

◇フレンチマインドのコホートの概要は、以下のとおり。

重度の再発性うつ病、双極性障害、統合失調症、精神病の初期症状、または知的障害のない自閉症スペクトラム障害の患者を追跡することを目的としている。

このコホートでは、より正確で客観的な精密精神医学上の診断ツールを開発するために、個人の症状の現れ方の特徴を詳細に把握している。

このコホートは、臨床データ、社会人口統計データ、遺伝データ、オミクスデータ、免疫データ、電気生理学的データ、デジタルデータ、画像データ、環境データなど、診断を充実させ、目標とする病相を特定するためのあらゆる関連データを大規模(2500人の患者と500人の対照群)に収集する。これらのデータは、既存の8,000人の患者コホートに追加される。

次に、ここで得られた集団は、一般的な病状の現れ方および病態生理学的特性を持つサブグループまたは病相に分割し、正確に診断し、的を絞った治療を受けることができる。

◇このプログラムが挑戦する課題は、以下のとおり多岐にわたる。

対処すべき課題が山積する中で、このプログラムは、最も重い障害である4つの精神疾患に取り組むことにより、精神医学の研究と臨床実践を変革し、メンタルヘルスに関連する専門職の魅力を高めることを目指している。

– 研究すべき病相、そのために収集する変数を定義し、それらを相互利用可能なマルチモーダル・データベースにまとめること
– これらの均質な病相またはサブグループの有効性を調べること
– 予後と層別化のバイオマーカーを特定すること
– これらの病相や臨床形態の根本的な原因やメカニズムの理解を深めること
– 特定されたメカニズムに的を絞った治療戦略を開発し、特定のサブグループまたは病相の患者で試験すること
– 精神疾患スティグマと虚偽の自己呈示を減らすこと
– メンタルヘルスと精神疾患における生物医学分野を構築し、実証されたイノベーションを実施できるようにすること

■マリオン・ルボワイエの結びの言葉

◇なぜ今、このプログラムが発展しているのか?
現在、精密精神医学プログラムが発展しているのは、学問分野、国、そして患者のすべての機運が熟しているからである。

◇なぜ機運が熟しているのか?
近年研究が大いに進歩し、今では一連の仮説を極めて正確に検証できるようになったからである。

フランスは、脳イメージングなど、特性評価のために使用できる多数のプラットフォームに投資していることもあり、条件が整っている。

ネットワーク、特にコホートに組み込まれる患者の評価を可能にする専門家センターのネットワークに基づくコホートも多く設定されている。

また今日、患者とその家族は、研究プログラムへ参加が意味する課題と重要性と理解しているからである。

[DW編集局]