[本文]
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- 国・地域名:
- フランス
- 元記事の言語:
- フランス語
- 公開機関:
- 国立科学研究センター(CNRS)
- 元記事公開日:
- 2025/02/18
- 抄訳記事公開日:
- 2025/03/26
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CNRSが欧州研究会議で卓越した存在である理由(連載、全2回中の1回目)
- 本文:
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(2025年2月18日付、国立科学研究センター(CNRS)の標記記事の概要は、以下のとおり)
2007年の欧州研究会議(European Research Council:ERC)の発足以来、総額14億ユーロを獲得しているCNRSは、現在もその主要な受益者であり続けている。しかし、若手研究者で申請書を提出するのは3分の1に止まっており、誰でも受賞者になりえることを考えれば、CNRSとしては機会を逃していることになる。また、2021年から2023年の間のCNRSの女性の応募者は31.9%であり、採択者は29.1%にすぎなかった。
研究者によっては最初の試みで受賞できたり、何度か失敗した後に受賞したりする例もあるが、受賞者の経験からは、ERCの助成金は「研究・イノベーション枠組みプログラム(Horizon Europe)」の探索研究部門では、大変な準備作業が必要であるものの、決して手の届かないものではないといえる。CNRSブリュッセル事務所によれば、CNRSの採用競争は非常に高い水準にあり、CNRSへの応募書にはERCに応募できるほど良い研究プロジェクトが含まれているという。
海洋エアロゾル(HAVEN : High above the ocean: unexplored molecular processes)に関するプロジェクトの受賞者であるクレマンス・ローズ氏は、2023年「ERC若手助成金」のCNRSの受賞者24人の1人である。申請書は、専門家の注目を引きつつ、かつ一般にも分かりやすくするという難しさがあるが、同氏が挑戦を決めたのは、科学面、予算面を含めて様々な支援があったこともある。
神経生理学研究所に所属し、アルツハイマー病の危険因子であるApoE4遺伝子の機能に関するプロジェクトで受賞したモー・グラトゥーズ氏は、2024年「ERC若手助成金」のCNRSの受賞者25人のうちの1人である。同氏は、申請時点ではまだ米国でポスドクとして活動中で、フランスに帰国する準備をしていた。同氏の最初の申請プロジェクトは却下されたが、審査員の評価を考慮した3度目の挑戦で合格した。同氏の場合もCNRSとエクス・マルセイユ大学の支援を受けた。
モー・グラトゥーズ氏は、ERCの助成を受けることで同氏の研究プロジェクトは「郊外のパビリオンからヴェルサイユの城へ」というほど次元から変わったと見ている。この助成により、2人のポスドクを採用し、実験資金を確保して研究を安定的に進め、成果を上げることができる。また、CNRSの中でも目立つようになり、研究パートナーを迅速に見つけることができるようになったという。
これらの受賞者は、受賞を喜びつつも、技術スタッフやポスドクの採用、機器の購入手続きの具体化、産休とプロジェクト実施期間との調整など受賞後直ちに様々な難題を解決していく局面に遭遇することになるが、ERCとのコミュニケーションを円滑に行い、これら問題の解決に取り組んでいる。
2021年初頭のHorizon Europeの立ち上げ以来、CNRSには合計279人のERC受賞者がおり、採択されたプロジェクトの数ではトップの機関となっている。この成功は続いており、探索的研究卓越性助成金が開始された2007年から2023年までの間にCNRSが受け取った資金総額が14億ユーロという点で欧州の機関をリードしている。しかし、CNRSは、研究者からのERCへの申請数をさらに増やしたいと考えており、CNRSの「事業履行契約」でも2024年から2028年の間にERCのプロジェクト申請数を20%増加させるという目標を掲げている。
(つづく)
(続きは3月27日に公開予定です)
[DW編集局]