[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
国立科学研究センター(CNRS)
元記事公開日:
2025/02/18
抄訳記事公開日:
2025/03/27

CNRSが欧州研究会議で卓越した存在である理由(連載、全2回中の2回目)

Pourquoi le CNRS domine au Conseil européen de la recherche

本文:

(2025年3月26日公開記事「CNRSが欧州研究会議で卓越した存在である理由(連載、全2回中の1回目)」の続き)

 長年にわたりERCの評判は、欧州の国境をはるかに超えて広がっている。ERCの科学評議会委員であるシルヴィー・ロレントゥ氏によれば、ERCは、創造性の発揮、アイデアの尊重、科学的野心に対する障壁の除去に貢献しているという。2024年、研究プログラムの独立性を保証する機関である科学評議会は、プロジェクトを重視し、それを実行する研究者の評判をあまり重視しないよう申請書の審査基準を改訂している。ERCが重視することはアイデアの卓越性と、それを実行する研究者の能力である。

 科学評議会には、「ERCを政治当局や一般市民に宣伝する」という使命もある。科学評議会は、次の予算期間である2028年から2034年にプログラムの予算を倍増することを決定した。ERCの資金不足もあり、優れた申請プロジェクトを数多く受理しながら助成できないこともある。欧州が助成できなければ、他に行ってしまい、米国と中国の間で欧州の魅力が危機に瀕することになる。加えてプロジェクトに配分される研究費の額は、創設当時から変わっておらず、インフレによってその魅力の多くが失われている。

 CNRSは、このERC予算の倍増を支持している。欧州の研究をより魅力的なものにするというERCの役割は、これまで発表された様々な報告書でも指摘されており、CNRSが認めていることもその正当性を示している。

◇ERC:欧州におけるCNRSの切り札

 欧州委員会(EC)は昨年、研究・イノベーションプログラムであるHorizon Europeを通じて、123億ユーロの助成金を交付した。これは1万2,000以上の組織に対するものである。CNRSは、2024年の総予算の1.88%にあたる2億3,100万ユーロを獲得した。そして、CNRSが際立っている点は、Horizon Europeの基礎研究部門であるERCのおかげで、2021年のプログラム開始以来、3億9,100万ユーロを獲得していることである。

 2007年に欧州連合(EU)によって設立されたERCは、欧州のフロンティア研究のための主要な資金提供プログラムである。あらゆる分野の研究者が主導するハイリスク・ハイポテンシャルのプロジェクトを支援する。ERCは、次の5種類の助成金を提供している。

▽ERC若手助成金(Starting Grant):キャリアをスタートさせたばかりの研究者(博士号取得後2〜7年)で、自らの研究チームを立ち上げる研究者向けで、資金提供額は5年間で最大150万ユーロ。

▽コンソリデーター助成金(Consolidator Grant):博士号取得後7年から12年の経験を持つ研究者が、チームを強化し、研究の範囲を拡大するための助成金。資金提供額は5年間で最大200万ユーロ。

▽上級助成金(Advanced Grant):優れた科学的実績を持つ経験豊富な研究者向けで、資金提供額は5年間で最大250万ユーロ。

▽シナジー助成金(Synergy Grant):複雑な科学的課題に共同で取り組む2〜4人の主任研究者のグループ向けで、資金提供額は6年間で最大1,000万ユーロ。

▽概念実証(Proof of Concept):研究成果を具体的なイノベーション(特許、ベンチャー企業、産業提携)につなげるためERC受益者のみが利用できる補完的な助成金で、資金提供額は18カ月間で最大15万ユーロ。

(おわり)

[DW編集局]