（2025年4月9日付、欧州委員会（EC）の標記発表の概要は以下のとおり）

欧州委員会は2025年4月9日、「AI大陸行動計画（AI Continent Action Plan）」を発表した。AI大陸行動計画は、以下5つの重要な柱（pillar）を中心とした行動と政策を通じて、EUのAIイノベーション力を高めるものである。

①大規模なAIデータとコンピューティング・インフラの構築
欧州委員会は、AIファクトリー（AI Factory）のネットワークにより、欧州のAIとスーパーコンピューティングのインフラを強化する。すでに13のAIファクトリーが展開されている。また、2025年1月の「競争力コンパス」で発表されたように、AIギガファクトリー（AI Gigafactory）の設立も支援する。2025年4月9日、「AIギガファクトリーに関する関心表明の募集（Call for expression of interest in AI Gigafactories (AIGFs)）」が発表された。2025年2月に開始した「InvestAI」を通じて、AIギガファクトリーへの民間投資をさらに刺激する。クラウドのキャパシティとデータセンターへの民間投資を刺激するため、欧州委員会は「クラウド及びAI開発法（Cloud and AI Development Act）」も提案予定である。

②大規模で高品質なデータへのアクセス拡大
データラボ（Data Labs）を創設し、AIファクトリーにおいてさまざまなソースからの大規模で高品質なデータを集め、キュレーションする。2025年内に包括的なデータユニオン戦略（comprehensive Data Union Strategy）が開始され、AIソリューションをスケールアップできる真のEU域内データ市場が創出される。

③EUの戦略的セクターにおけるアルゴリズムの開発とAIの導入促進
欧州委員会は、今後数カ月以内に「アプライAI戦略（Apply AI Strategy）」を発表する予定である。この戦略において、特にAIファクトリーや欧州デジタル・イノベーション・ハブ（EDIH）をはじめとした欧州のAIイノベーション・インフラが重要な役割を果たす。

④AIスキルと人材の強化
AIの人材に対する需要の高まりに対応するため、欧州委員会は、「人材プール（Talent Pool）」、マリー・スクウォドフスカ・キュリー・アクション（MSCA）の「MSCA Choose Europe」、今後設立される「AIスキルアカデミー（AI Skills Academy）」が提供するAIフェローシップ制度（AI fellowships scheme）などの取り組みを通じて、高いスキルを持つAIの専門家や研究者の国際的な採用を促進する。

⑤規制の簡素化
AI法は、技術に対する市民の信頼を高め、投資家や起業家が欧州全域でAIを拡大・展開するために必要な法的確実性を提供する。欧州委員会はまた、企業によるAI法の遵守を支援するため、「AI法サービスデスク（AI Act Service Desk）」を開設する。このサービスデスクは、AI法に関する情報やガイダンスを提供する中心的なコンタクトポイントとなる。

[DW編集局]