[本文]
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- 国・地域名:
- フランス
- 元記事の言語:
- フランス語
- 公開機関:
- 国立研究機構(ANR)
- 元記事公開日:
- 2025/04/18
- 抄訳記事公開日:
- 2025/05/02
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在外研究者のフォーム「Choose France for Science」始動 半額を上限に資金支援、受け入れ強化へ
- 本文:
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政府は18日、フランスでの研究活動を希望する在外研究者を募るプラットフォーム「Choose France for Science」(CFS)を始動させた。CFSに応募して採択された研究者のプロジェクトには、投融資計画「フランス2030」の枠組みから資金の半額を上限に助成するといい、在外研究者の受け入れを中長期的に強化することを目的としている。
政府によると、CFSは「フランス2030」の事業として行い、国立研究機構(ANR)が運営の実務を担当。大学やグランドゼコール、研究機関などが、在外研究者を受け入れるための資金を共同で出すことも可能にするとしている。
プロジェクトを募集する領域の区分は、▽医療、▽気候・生物多様性・持続可能な社会、▽デジタル・人工知能、▽宇宙研究、▽農業・持続可能食料・林業・自然資源、▽脱炭素エネルギー、▽機器・システム・デジタルインフラ――の7種類である。研究者側の手順としては、まずCFS専用のフォームにアクセスし、自身のアカウントを作成したうえで、7区分のいずれかに応募する。
また評価基準は「プロジェクトの質」「応募するに至った背景事情」「研究者自身がフランスにおいて研究を継続したい動機」「プロジェクトの資金を獲得するための能力」の4点が挙げられている。
ボルヌ国務大臣兼国民教育・高等教育・研究大臣は「科学や研究活動が全世界的に未曾有の脅威にさらされるなか、わが国は自らの立ち位置を確保しながら、研究者らに手を差し伸べ、居場所を作るべきだ。今回のプラットフォームの始動は、学問の自由と独立を愛するわが国の、あくなき取り組みを体現するものだ。脅威にさらされた研究者やラボ、データなどをわが国としてよりよい条件で迎え入れられるよう、大胆に行動してほしい」とコメント。バティスト高等教育・研究特命担当大臣は「欧州とフランスは、研究を継続しようとする優秀な研究者にとって魅力的な環境であるはずだ。今回のプラットフォームの始動は、わが国の機関が在外研究者の受け入れに備えるツールとなるだろう」と話している。
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<DW編集局から補足>
政府やANRの公式発表には、今回CFSを始動させる背景については具体的に言及されていませんが、2025年1月以降、米トランプ政権が多様性、公平性、包括性(いわゆるDEI)の尊重などに相次いで否定的な姿勢を示していることから、主に米国外に活動拠点を求めようと考える在米研究者の取り込みを狙っているとみられます。公共放送「franceinfo」が4月19日付でリリースした記事によると、バティスト大臣は、米政権がファンディング機関への資金を大幅にカットしていることについて「あれはカットではなく虐殺だ」と発言。「NIHやNOAAの予算が大幅に削られれば、彼らはわれわれ欧州やフランスの機関と非常に強いつながりを持っているのだから、舞台裏では国際的なプロジェクトが深い傷を負うことになる」と懸念しています。またこの記事によると、政府はCFS関連の事業に「今後3年間で約1億ユーロを投じる」とのことです。
(フランス担当フェロー・内田遼)
[DW編集局]