[本文]

国・地域名:
ドイツ
元記事の言語:
ドイツ語
公開機関:
フラウンホーファー協会(FhG)
元記事公開日:
2025/05/11
抄訳記事公開日:
2025/05/27

フラウンホーファー協会ハンゼルカ会長、三党連立協定について見解を表明

Statement von Prof. Holger Hanselka zum Koalitionsvertrag

本文:

(2025年5月11日付、フラウンホーファー協会(FhG)の標記発表の概要は以下のとおり)

4月8日、キリスト教民主同盟(CDU)、キリスト教社会同盟(CSU)、ドイツ社会民主党(SPD)の三党が連立協定を発表した。フラウンホーファー協会の見解によれば、本協定はドイツのイノベーション力と国際競争力を強化する上で重要な項目が含まれている。フラウンホーファー協会のハンゼルカ会長は、協定の中核をなす施策について、次のように前向きに評価している。

連邦研究技術宇宙省(BMFTR)の新設は、まさに時機を得た適切な判断であり、今後の連邦政府がイノベーションに高い重要性を見出していることの明確な表れである。これは行政プロセスおよび制度の簡素化をもたらすのみならず、連邦政府による研究支援の統合により、構想から産業への展開、さらには社会的・経済的ニーズから個別支援の決定に至るまで、統一性と整合性をもった国家のイノベーション政策実現を可能とする。

イノベーション自由法および研究データ法に関する前向きな姿勢は、大きな期待を抱かせる。科学と研究を官僚的な障壁から解放し、イノベーションに資する柔軟な制度的枠組みを整えることは喫緊の課題である。今回の連立協定において合意された重要事項には、研究機関および研究者が、それぞれの補完的な専門分野に即して役割をより明確に分化させること、ならびに国内総生産に対する研究開発費支出を3.5%へと拡充することが含まれている。

財源が限られる状況においては、ドイツ政府のハイテク戦略において中核的な先端技術を的確に選定し、優先的に推進することが不可欠である。たとえば、人工知能(AI)が持つ可能性は、デジタルによる価値創出の梃子として的確に引き出さなければならない。そのためには、中小企業のニーズに即したAI支援プログラムを、技術移転の観点から再設計し、AIエコシステムの形成を重点的に支援する必要がある。また、防衛研究を戦略的に発展・連携させる意思を明確にすることは、研究がドイツおよび欧州の安全保障に資するとの理解を社会にもたらす一助となるだろう。

新たに設立される「連邦デジタル化国家近代化省」は、重要な政策的推進力となるものと期待している。分野横断的なデジタル化を国家的優先事項として迅速に進めることこそが、激化する国際競争の中でドイツがデジタル分野における先進的ハイテク立地として確固たる地位を築く鍵となる。そのためには、大胆かつ戦略的なデジタル政策が必要である。産業応用に資するAIの分野でもさらなる成果の加速が望まれ、フラウンホーファー協会が主導して開発した言語モデルTeuken-7Bが、より迅速かつ効果的に企業へ実装されることが期待される。

このように、今回の連立協定には、ドイツのイノベーション力および競争力の強化につながる重要な要素が盛り込まれている。課題は、これらの要素を現実の政策として実行に移し、実効性のある形で命を吹き込めるか否かにある。フラウンホーファー協会は、今後もパートナーとしてこの取り組みに積極的に参画し、科学から産業への知識・技術移転を実効性のあるかたちで一層推進していく考えである。力強く革新的な経済と、しなやかに繁栄する社会の実現のために--それは、今ほど重要な時代はない。

[DW編集局]