[本文]
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- 国・地域名:
- フランス
- 元記事の言語:
- フランス語
- 公開機関:
- 高等教育・研究省(MESR)
- 元記事公開日:
- 2025/05/12
- 抄訳記事公開日:
- 2025/06/04
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政府、臨床試験結果の体系的開示に向けた政策提言に関する報告書を公表
- 本文:
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(2025年5月12日付、高等教育・研究省(MESR)の標記発表の概要は、以下のとおり)
フランスにおいて、オープンサイエンス国家計画の一環として、保健省および高等教育・研究省のもとに設置したワーキンググループが、すべての臨床試験結果の体系的開示に関する提言を盛り込んだ報告書をまとめた。この報告書は、臨床試験結果の透明性が研究・医療分野における重大な問題であることを明確にし、その科学的・倫理的・財政的背景を詳細に論じている。
この報告書は、臨床試験の企画・実施・監督に関与するすべての関係者に向けて、実務的かつ具体的な提言を示し、欧州の関連規制の円滑な施行を促進しつつ、研究者・患者・社会全体の利益のために「透明性の文化」を根づかせることを目的としている。
◇報告書の要旨は、以下のとおり。
この報告書では、すべての臨床試験結果を迅速に開示することは共同責任であると明示している。肯定的な結果のみが選択的に報告される出版バイアスは、誤った医療政策判断を招く恐れがあるとして、警鐘を鳴らし、資金提供者を含むすべての臨床試験関係者に対して提言を行っている。
臨床試験の試験結果は、主要評価項目に関する最終被験者の来院日から起算して12か月以内に登録簿上で開示されるべきとして、その重要性がとりわけ強調されている。ここで言う「臨床試験結果の開示」とは、参加者の特徴、主要および副次的評価項目の結果、有害事象などに関する集計データを、一般に公開されている臨床試験登録簿上で公開することを意味しており、学術誌への論文投稿とは異なる。臨床試験結果の開示は、世界保健機関(WHO)および世界医師会が求める倫理的義務として求める行為であり、米国と同様、欧州においても法的義務でもある。なお、フランスでは、欧州規則に基づき、公衆衛生法第L.1128-12条により、所定の期限内に臨床試験結果を開示しなかった場合にはされる。
◇主な提言は、以下のとおり。
1. 保健省および研究省は、すべての臨床試験関係者に向けたガイドラインを策定し、臨床試験結果の体系的な開示を促す明確な国家方針を示す。
2. 臨床試験の推進者は、臨床試験結果の開示の手順と日程に関する責任分担を明確化し、研究責任医師への教育・注意喚起・催促を体系的に実施し、臨床試験結果の開示義務をプロトコル標準様式に組み込む。
3. 臨床試験への資金提供者は、臨床試験結果の開示実績を評価指標に反映し、資金配分プロセスにおいて研究の透明性確保に対する責任を果たす。
4. 欧州の関係機関は、欧州臨床試験情報システム(CTIS)における臨床試験結果開示のためのユーザーインターフェースを改善し、CTISを国際的に通用する研究・出版支援ツールとして確立させる。
5. 規制当局は、試験依頼者および実施者が使用する標準様式に、臨床試験結果の開示に関する事項を組み込み、この義務の重要性を想起させる。
6. 大学は、特に臨床研究に特化した教育課程において、臨床試験結果開示義務の理解を深めるなど関係者を訓練し、研究実施者が直面する課題の解決を支援する。
7. 研究機関、研究者および大学等を評価する機関は、臨床試験結果の開示に関する方針や戦略等を評価基準に組み込む。
8. フランス研究インテグリティ事務局(OFIS)(研究・高等教育評価高等審議会(HCÉRES)の内局)は、臨床試験結果の開示を科学的公正性に関する基準体系に組み込む。 [DW編集局]