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- 国・地域名:
- EU
- 元記事の言語:
- 英語
- 公開機関:
- 欧州委員会(EC)
- 元記事公開日:
- 2025/05/14
- 抄訳記事公開日:
- 2025/06/10
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2025年のHorizon Europeワークプログラムが採択:競争力と人材育成を強化
EU invests €7.3 billion from Horizon Europe to enhance its competitiveness and talent growth
- 本文:
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(2025年5月14日付、欧州委員会(EC)の標記発表の概要は以下のとおり)
欧州委員会は2025年5月14日、2025年に向けたHorizon Europeワークプログラムを発表した。これにより、欧州の研究・イノベーションの推進力および世界的競争優位性を強化し、73億ユーロ超を投資する。この取り組みにより、最先端の科学の発展が促進されるとともに、EUのグリーンおよびデジタル移行が加速され、欧州全体の競争力が一層高まる見込みである。
2025年のワークプログラムでは、欧州におけるトップ研究者の誘致および定着を図るとともに、戦争や避難を余儀なくされた研究者に対する的を絞った支援も提供する。その一環として、欧州委員会は、マリー・スクウォドフスカ・キュリー・アクション(MSCA)2023~2025年ワークプログラムの一部を改訂し、ウクライナの科学者への支援を強化するとともに、若手研究者により充実した支援と機会を提供するMSCA 「Choose Europe for Science」パイロットプログラムを新たに開始する。同取組みでは、競争力のある手当や長期契約が用意されている。
欧州研究会議(ERC)を通じて、欧州に移住する研究者は既に助成金に上乗せで資金提供を受けており、最近倍増された。さらにERCでは、7年間の「スーパー助成金(super grants)」が新設され、トップ人材への長期的な支援が提供される。
■ Horizon Europe2025年ワークプログラムの主なポイント
・EUの優先課題の実現
研究・イノベーション(R&I)は、EUの優先課題の中核を成している。2025年のワークプログラムでは、デジタルおよび宇宙技術分野への資金投入、グリーンプロジェクトと持続可能な開発の支援、組織犯罪とテロの脅威への対策、二酸化炭素排出量やエネルギーコストの削減などが盛り込まれている。また、5つのEUミッションに対し、6億6,300万ユーロ超が投資される。・気候目標およびデジタル目標の加速
2050年までに欧州を世界初の気候中立大陸にするという目標に向け、Horizon Europeの資金の35%が気候関連施策に充てられている。2025年ワークプログラムでは、総予算の35%が気候変動対策、8.8%が生物多様性にそれぞれ割り当てられる。同時に、Horizon Europeの資金の36%がデジタル移行を後押しし、そのうち16億ユーロが人工知能の開発に充当される。・自動車分野における研究・イノベーションの推進
2025年ワークプログラムでは、より環境に優しく、競争力のある輸送ソリューションの開発に向けた支援を通じて、欧州自動車産業の変革を後押しする。支援対象には、次世代バッテリー電気自動車、自動車部品の先端製造技術、車両のデジタル化、サイバーセキュリティ、循環経済の実践展開が含まれる。さらに、スマートかつ強靭なモビリティ・システムの構築も促進される。・申請手続の簡素化
欧州委員会は2025年ワークプログラムにおいて、申請手続の簡素化に着手した。必要に応じて、総予算の35%を占める一括交付金などの簡素化されたコストオプションを拡大し、受益者の不要な財務報告要件を削除する。29のトピックで2段階方式を採用し、申請者はまず短い提案書を提出し、第2段階に選出された場合のみ詳細な提案書を準備できる。これにより、申請者の事務的負担が軽減される。・人材支援
2025年ワークプログラムは、人材への投資を通じて「頭脳流出」への対応を図り、活気ある研究環境を推進する。MSCAの一環である「Choose Europe for Science」のパイロット運用では、有望な若手人材の欧州への誘致・定着に向け2,250万ユーロが投資される。若手研究者に対し、競争力のある手当や長期契約を含むより多くの支援と機会を提供する。研究者に対し、優れた研究、教育、またはマネジメントの機会を提供するポスドク・フェローシップの共同資金提供も行う。・欧州近隣地域の活性化
2025年から2027年まで実施される「新欧州バウハウス(NEB)ファシリティ」は、欧州の居住空間を持続可能で包摂的かつ美しいものにする革新的なプロジェクトを支援する初の他年度資金提供ツールである。2025年向けの「NEBファシリティ提案募集」は2025年5月15日から開始され、Horizon Europeプログラムから1億1,840万ユーロが専用の予算として割り当てられる。・ウクライナの研究者への支援
2025年のワークプログラムは、ロシアの侵略戦争の影響を受けた科学者や機関への機会創出を奨励しており、「Horizon Europe Office in Ukraine」への支援は継続される。MSCA4Ukraineイニシアチブを通じて、MSCAからウクライナ研究者に1,000万ユーロが提供される。・ガザ地区の研究者への支援
2025年のワークプログラムは、「バーチャル研究協力ハブ(Virtual Research Collaboration Hub)」を通じてガザの研究者に迅速な支援を行う。バーチャル研究協力ハブは、メンターシップ、協力の機会、学術資源へのアクセスを提供する。■ 次のステップ
最初の提案募集は、5月15日に欧州委員会の「助成・公募ポータル(Funding and Tenders portal)」で開始される。2026~2027年には、Horizon Europeワークプログラムのさらなる簡素化が予定されている。 [DW編集局]