[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
国立科学研究センター(CNRS)
元記事公開日:
2025/05/14
抄訳記事公開日:
2025/06/11

スパコン「ジャン・ザイ」、能力が4倍に 第4次拡張で125.9ペタフロップスに到達

Supercalculateur Jean Zay : la France multiplie par 4 les ressources scientifiques en IA

本文:

(2025年5月14日付、国立科学研究センター(CNRS)の標記発表の概要は、以下のとおり)

CNRSは、人工知能(AI)分野の中核的計算基盤であるスパコン「ジャン・ザイ(Jean Zay)」の処理能力を4倍とする第4次拡張を終え、5月13日、公式に稼働させた。

「ジャン・ザイ」は、前任機「チューリング」に代わり2019年に稼働を開始し、AI研究を中心とする需要の増大に応えるために、段階的な性能強化を重ねてきた。今回の第四次拡張は、2023年6月にフランスで行われたスタートアップ見本市「VivaTech」でマクロン大統領が発表しており、これにより、計算性能は64ビット精度で最大125.9ペタフロップス(毎秒12京5千9百兆回)に到達。従来の4倍の性能を実現した。同機は、CNRS傘下の科学計算開発資源研究所(IDRIS)に設置・運用されており、国立高機能計算推進機構(GENCI)により整備された。

今回の拡張において、欧州のメーカーであるエビデン(Eviden)社との競争的対話手続きを経て、最新構成「ジャン・ザイ4」が導入されている。この性能は、人類全体が1秒に1回ずつ計算したとしても182日を要する計算量を1秒で処理できることに相当し、加えて、ストレージ容量も約100ペタオクテット(約100ペタバイト)規模に増強されている。

「ジャン・ザイ」は、すでに数千件に及ぶ学術・産業プロジェクトに活用されており、その計算資源は、大学研究者、スタートアップ、主要企業のすべてにとって極めて重要な基盤となっている。

今回最新構成となった「ジャン・ザイ」は、エビデン社等が提供する次世代の温水冷却技術を採用しており、欧州において最も環境効率の高いスパコンの一つである。設備から生じる残留熱は、サクレー高原地域に位置する約1,500世帯の暖房に利用されている。

AI分野における国家戦略の要でもある「ジャン・ザイ」は、技術スタッフの卓越した支援体制に支えられ、2019年には年間72件であったAI関連プロジェクトの採択数が、24年には1400件超となり、5年間で20倍に増加した。現在では欧州における最も成功したAI用スパコンの一つと評価されている。

さらに、同機は将来的に発足が予定されている「AIフランス・ファクトリー(Factory France)」構想においても中核的な計算インフラを担う予定である。本構想は、GENCI、CNRSなどが連携する欧州AI基盤プロジェクトであり、フランスおよび欧州のAIコミュニティに対し、計算資源、専門支援、研修、教育、知識共有サービスを一体的に提供することを目的としている。

なお今回の「ジャン・ザイ」の筐体デザインは、AI技術を用いたアート作品で国際的に知られるフランスの芸術家グループ「オービウス(Obvious)」が手がけた。

スパコン「ジャン・ザイ」の名称は、1936年6月から39年9月まで国民教育・美術大臣を務め、44年6月20日、反レジスタンスの民兵によって暗殺されたジャン・ザイ氏に由来する。ザイ氏は39年10月19日のCNRS創設に尽力した。2019年のCNRS創設80周年を記念して同氏の名前がこのスパコンに付けられた。

[DW編集局]