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- 国・地域名:
- ドイツ
- 元記事の言語:
- ドイツ語
- 公開機関:
- マックスプランク協会(MPG)
- 元記事公開日:
- 2025/05/14
- 抄訳記事公開日:
- 2025/06/11
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ナトリウム―硫黄電池の革新に向けて:マックスプランク研究所とGelion社が戦略的提携
- 本文:
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(2025年5月14日付、マックスプランク協会(MPG)の標記発表の概要は以下のとおり)
マックス・プランク・コロイド界面研究所は、オーストラリアに本拠を置き、英国でも事業展開を行う電池メーカーのGelion社と提携(※注)し、次世代ナトリウム-硫黄電池の開発を進めている。研究所で開発された硫黄-炭素材料により、電池の耐用年数とエネルギー密度の向上が期待される。提携契約では、Gelion社が60万ユーロの研究資金を拠出し、その対価として本研究から得られる特許の独占的ライセンス権を取得することが定められている。
(※注)2025年3月27日に両者は戦略的提携契約を締結済みアントニエッティ(Markus Antonietti)所長の指揮の下、研究チームは硫黄と炭素を用いた新たなカソード材料を開発し、電池寿命の制約という従来の技術的限界に対し、明確な進展を示した。アントニエッティ所長は「両者は、持続可能かつ高性能なエネルギー・ソリューションを、グローバルな需要に応えるかたちで提供することを目指している」と述べ、リチウム電池に代わる大型固定型電池の実用化に向けた長期的な挑戦への意欲を示している。
ナトリウム-硫黄電池はこれまで、ポリサルファイド・シャトルと呼ばれる技術的課題直面していた。この現象では、可溶性ポリサルファイドが電極間を移動し、性能の劣化と寿命の短縮を引き起こす。こうした課題に対し、研究チームが開発したナノ細孔を有する硫黄-炭素材料は、これらの有害成分を構造内部に封じ込めることで、電池性能の安定化に成功している。
Gelion社のウッド(John Wood)CEOは「コロイド界面研究所と当社の技術的知見を組み合わせることで、炭素・硫黄・ナトリウムの特性を単一セル内で最適化できる可能性が開ける」と期待を語った。
Gelion社はすでに、コロイド界面研究所で開発されたコインサイズの試験セルをもとに、その100倍のスケールとなる試作プロトタイプの設計に着手している。同社の創業者のマシュマイヤー(Thomas Maschmeyer)氏は、「この連携により、安全性、経済性、環境適合性を兼ね備えた次世代エネルギー貯蔵技術の確立が期待される」と述べている。
[DW編集局]