[本文]
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- 国・地域名:
- ドイツ
- 元記事の言語:
- ドイツ語
- 公開機関:
- マックスプランク協会(MPG)
- 元記事公開日:
- 2025/05/22
- 抄訳記事公開日:
- 2025/06/20
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マックスプランク協会、核融合など先端技術の実用化加速へ:TRL評価を内部実施
- 本文:
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(2025年5月22日付、マックスプランク協会(MPG)の標記発表の概要は以下のとおり)
マックスプランク協会のクラーマー(Patrick Cramer)会長は、マックスプランク・イノベーション有限会社(MI)の経営者であるヴィーランズ(Bram Wijlands)氏とともに、起業意欲を持つ研究者たちとそのスタートアップの可能性について語り合った。
対談では、次の三点が主要な論点として取り上げられた。
1. 新たなエネルギー源の創出:Proxima Fusion社は、汚染物質を排出せず、かつ高い信頼性を持つエネルギー源として、核融合発電技術の実用化を目指している。同社は2030年代にドイツ国内で初の核融合発電所の建設を計画している。
2. 未来の技術の担い手としてのスタートアップ:Proxima Fusion社のようなスタートアップは、気候変動やエネルギー資源の逼迫といった地球規模の課題解決に資する存在である。マックスプランク協会は、このような技術革新を後押しするため、研究成果の社会的認知度の向上および商業化支援に積極的に取り組んでいる。
3. 技術成熟度評価(Technology Readiness Level: TRL):TRLは、技術が基礎研究段階から実用化に至るまでの成熟度を体系的に評価する指標である。マックスプランク協会は、投資家が直面するリスクの低減を図るため、従来は市場に委ねられてきたこの評価プロセスの初期段階を、今後は協会内部で実施する方針を明らかにしている。クラーマー会長は、持続可能な未来の実現においては、核融合技術に加え、革新的バッテリー材料(Batene-Vlies)のBatene社、量子コンピューターを推進するPlanqc社、そしてサイバーバレーを拠点とする人工知能(AI)スタートアップのMeshcapade社など、多様な先端技術の取り組みが極めて重要であると強調した。これらはマックスプランク協会の研究者が生み出した卓越した知的産物の一端にすぎないとしつつ、「政治レベルにおいても、現代社会が直面する重大な課題に対し、技術による解決を図る姿勢が明確になっている。マックスプランク協会は既に決定的な貢献を果たしており、今後さらにその役割を強化していく。」と強調した。
MI社は、マックスプランク協会における技術移転の中核を担う子会社として、各研究所が保有する先端技術の潜在能力を、経済的・社会的に有意義な応用へと結実させることを任務としている。MI社の当面の目標は、年内にもマックスプランク協会内で新たな評価プログラムを開始することである。
このプログラムでは、TRLの枠組みに基づき、実用化が見込まれる研究成果の進展度を体系的に評価・高度化することが目的とされる。TRLは本来、NASAが宇宙開発計画における技術的リスクを適切に管理する目的で策定した評価スキームであり、イノベーションの進捗状況や、市場投入までに今後必要とされるステップを明確にするのに資するものである。これまではTRL評価は主に市場において行われてきたが、それにより投資家が金銭的リスクの判断材料として活用してきた。
MIのヴィーランズ氏は、「今後、TRLの初期段階をマックスプランク協会が自ら担うことになれば、同協会がイノベーション推進とリスク低減の両立に明確にコミットしていることの証となる。」と述べた。
[DW編集局]