（2025年5月23日付、欧州委員会（EC）の標記発表の概要は以下のとおり）

EUは、優れたキャリアと恵まれた労働・生活環境を提供することで、研究者やイノベータにとって世界有数の目的地となることを目指している。2025年5月23日の競争力理事会で、スタートアップ・研究・イノベーション担当委員のエカテリーナ・ザハリエワ氏は、欧州で研究者のキャリア構築を支援する60を超える地域、国家、EUレベルの資金提供・支援プログラムに関する「科学のために欧州を選ぶ―EUが世界中の研究者を支援する取組みのスナップショット（Choose Europe for science―A snapshot of initiatives in the European Union to support researchers worldwide）」を提示した。

欧州委員会が取りまとめ、EURAXESSプラットフォーム上で公開された統合パッケージ「Choose Europe for Science」は、研究キャリアのあらゆる段階にある人材に対し、数十億ユーロ規模の多様な支援策を提示する。内容は、競争型助成金やモビリティ支援、テニュアトラック制度、リスクに直面する研究者向けフェローシップ、27加盟国全域でのキャリア開発支援にまで及ぶ。

本パッケージは、2025年5月に発足したChoose Europeキャンペーンの一環であり、欧州の価値観に基づく研究環境と高い生活水準を促進する取り組みである。2025～27年に向けた新規5億ユーロ規模の資金があり、欧州を研究者にとって魅力的な拠点とすることを目指している。

この目標をさらに強化するために、欧州委員会はHorizon Europeの2026-2027ワークプログラムの下で、「欧州研究圏（ERA）チェア（Chairs）」の新規公募を提案している。加盟国の承認が得られれば、予算は前回の2倍以上の2億3,000万ユーロ規模となり、研究・イノベーションの成果で後れを取る国において、最大120名のトップ研究者および研究管理者の支援が可能になる。

EUレベルではさらに、欧州委員会はグローバルな研究人材の誘致を目的として、下記に示すような新たな資金調達機会の整備にも着手している。

・「ERCアドバンスト助成金（ERC Advanced Grants）」の一環として、移転および研究立ち上げにかかる人件費・設備費・大規模ファシリティへのアクセス費用などを補助するため、研究者1人あたり200万ユーロの追加支援が構想されている。
・「ERCスーパー助成金（ERC Super Grant）」イニシアティブでは、7年間にわたる助成の創設が近日中に予定されている。
・2025年5月15日に発表された「MSCA Choose Europe for Scienceパイロットプログラム」では、2,250万ユーロの予算のもと、「ポスドクフェローシップ（postdoctoral fellowships）」を拡充し、受入機関による長期的な雇用機会の提供が奨励されている。

EUにおける研究キャリア支援と研究者にとって適切な枠組み条件の整備へのコミットメントをさらに示すため、EU理事会は2025年5月23日、欧州研究領域（ERA）政策アジェンダ2025-27を採択した。新たなアジェンダは、2022-24年を対象とした第1版の成果を基盤に構築されている。戦略的優先事項の具体的な行動への反映、研究とイノベーション（R&I）政策調整の改善、いわゆる第5の自由、すなわち研究、イノベーション、技術のための単一市場の確立を目指している。

[DW編集局]