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- 国・地域名:
- ドイツ
- 元記事の言語:
- ドイツ語
- 公開機関:
- ユーリッヒ研究センター(FZJ)
- 元記事公開日:
- 2025/06/02
- 抄訳記事公開日:
- 2025/07/04
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ユーリッヒ研究センター:アンモニア合成の柔軟運転とコスト削減を可能にする新型圧力制御を開発
- 本文:
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(2025年6月2日付、ユーリッヒ研究センター(FZJ)の標記発表の概要は以下のとおり)
アンモニア生産の低炭素プロセスへの転換は、気候変動対策における主要課題の一つである。FZJ、ミュンヘン工科大学、リンデ・エンジニアリング社の研究チームは、再生可能エネルギーを活用し、環境負荷が小さく、費用対効果にも優れたアンモニアを生成する反応器の設計をシミュレーションにより提示した(“International Journal of Hydrogen Energy”誌に掲載)。
・気候要因としてのアンモニア:
グリーンアンモニアは、気候にやさしい代替手段を提供する。この手法では、水素を天然ガスではなく、水を再生可能エネルギーで電気分解して得る。問題は、風力や太陽光といった再生可能エネルギーが常時安定して利用できないことであり、それにより、水素供給が変動し、プラントの運転条件が不安定化する。アンモニアプラントがこうした変動に柔軟に対応するには、生産量を迅速に増減できる負荷追従性が求められるが、従来型設備では急激な出力変化に伴い、反応器内や配管系の圧力が大きく変動し、機械的負荷が増すという課題がある。本研究は、スマートな制御システムの導入により、こうした運転時の圧力変動を抑制し、設備に求められる機械的安定性への要件を緩和できる可能性を示している。
・変動への新たな対応策:
研究によれば、アンモニアループにおける新たな圧力制御手法により、コスト競争力のある運転が実現可能となる。このアンモニアループでは、反応に使用されなかった水素や窒素が再びプロセスに循環される。研究チームのシミュレーションでは、このループを柔軟に制御することで、急速な負荷変動に対しても低圧力変動を維持しつつ対応できることが示された。具体的には、アンモニアの生成量を1分以内に3%変化させることが可能であり、これは現在の天然ガスベースでの従来型プラントでは実現困難な速度である。これにより、将来的には装置のバッファー容量や壁厚の縮小が可能となり、材料コストの削減にもつながる。
なお、研究チームは既に柔軟運転可能な反応器の試作を完了しており、次の段階として、FZJにおいて新たな圧力制御と高負荷応答性を実証する試験設備の構築が予定されている。
[DW編集局]