[本文]

国・地域名:
ドイツ
元記事の言語:
ドイツ語
公開機関:
マックスプランク協会(MPG)
元記事公開日:
2025/06/14
抄訳記事公開日:
2025/07/11

マックスプランク協会の内部通報システム批判に対する司法判断と組織の対応

Zur Entscheidung des Landgerichts München 1 vom 30. Mai 2025 – Der Spiegel muss Teile seiner Berichterstattung vom 13. März 2025 unterlassen

本文:

(2025年6月4日付、マックスプランク協会(MPG)の標記発表の概要は以下のとおり)

シュピーゲル誌は2025年3月13日、マックスプランク研究所の若手研究者からの訴えについて報道した。報道で取り上げられた複数の事案のうち、具体的な告発内容が記載されていたのは、2015年~2016年および2020年~2021年に発生した2件に限られていたが、シュピーゲル誌はこれらを根拠として、MPGの内部通報システムが機能不全に陥っていると報道した。これに対し、MPGはミュンヘン地方裁判所に記事の一部差止めを求めて提訴し、今回、報道の信憑性を巡る重要な争点において、同裁判所より主張が認められた。

記事で取り上げられた告発に関し、MPGは報道前にシュピーゲル誌に対して詳細な情報の提供を求めたが、具体的な回答は得られなかったため、何らの対応も取ることができなかった。前述の2件に関する記述も事実に反しており、地方裁判所は本件を虚偽の内容であると判断した。その結果、シュピーゲル誌が示した事例は、MPGの博士課程およびポスドク向け内部通報システムが機能していないことの証拠とはならなかった。このため、同誌による通報システムへの批判は、ミュンヘン第一地方裁判所の仮決定により、その根拠を失うに至った。

MPGは、研究所における良好な職場環境の整備に注力している。2019年に実施した全研究所を対象とする調査に基づき、大幅な改善を実施している。特に、心理社会的側面に配慮した即時相談体制が整備され、20か国語での対応が可能である。また、職場上の問題については、各研究所のオンブズパーソンや従業員代表のみならず、外部の信頼できる法律事務所またはMPG本部の内部監査部門への通報も可能である。すべての連絡手段はオンラインで利用可能であり、多様な媒体を通じて広く周知されている。

MPGは、国際的なトップレベルの研究環境においては、研究者に過大な負荷がかかる場合があることを認識している。このため、MPG内部の各層の人々と連携を図り、研究者への支援体制の継続的な改善に努めている。具体的には、安定的な契約期間の確保、博士課程研究者を対象とした論文アドバイス委員会(Thesis Advisory Committee)の設置、さらに新設されたポスドクプログラムにおける二名の独立したメンターによる支援体制の整備などが含まれる。

[DW編集局]