[本文]
-
- 国・地域名:
- ドイツ
- 元記事の言語:
- ドイツ語
- 公開機関:
- フラウンホーファー協会(FhG)
- 元記事公開日:
- 2025/06/25
- 抄訳記事公開日:
- 2025/08/13
-
mp3誕生30周年:フラウンホーファーIISが築いた音響符号化技術の系譜
- 本文:
-
(2025年6月25日付、フラウンホーファー協会(FhG)の標記発表の概要は以下のとおり)
2025年7月14日、ファイル拡張子“.mp3”は誕生から30周年を迎える。このオーディオ形式は、ドイツ・エアランゲンにおいて開発された音響符号化技術の数々の革新において、基盤的な役割を果たしてきた。
フラウンホーファー集積回路研究所(IIS)による、いまなお世界的な影響を及ぼし続ける技術革新の軌跡が今、あらためて注目されている。mp3開発のチームは1990年代半ば、mp3を小型で携帯可能なデバイス上でも再生可能にするという目標を掲げていた。インターネットの急速な普及に伴い、その利便性は広く受け入れられ、mp3形式による音楽配信は瞬く間に拡大した。FhG IISのチームは、mp3デコーダチップの開発に関わったドイツ企業を見出し、エアランゲンで可動部のない初のmp3プレーヤーを完成させた。
mp3の圧縮技術は、人間の聴覚特性を巧みに応用している。音声信号には、ヒトの耳には聴こえない成分が常に含まれており、こうした知覚上重要でない情報は、精度を抑えた少ないビット数で保存される。その結果、ファイルサイズは最大で10分の1にまで圧縮される一方で、聴覚上の差異はほとんど認識されない。この画期的な手法の組み合わせが、mp3の世界的な普及を後押しした。
本方式は1990年代にISO-MPEG委員会により標準化され、初期のMPEG-1規格には、Audio Layer 1・2・3の3方式が盛り込まれた。mp3という名称は、MPEG-1 Audio Layer-3の略称であり、1995年7月14日にフラウンホーファー IIS内部の電子メールによる投票で決定されたものである。
フラウンホーファーIISにとって、このコーデックの開発は、研究所の成長と世界的な技術的・財政的飛躍の起点となった。mp3は、その後に続く4世代にわたる音響コーデック技術の基礎を築き、今日では日常生活の通信やメディア環境に欠かせない存在となっている。
同研究所は、こうした成功の軌跡をさらに発展させるために、絶え間ない技術開発を続けている。mp3に続く各世代のコーデックもまた、mp3に比肩する経済的成果を収めてきた。
近年では、人工知能(AI)を活用した第5世代のコーデックが開発されており、音声信号に対して3 kbit/s未満という、かつては想像もされなかった低ビットレートでの伝送が実現された。また、AI応用の別の例として、upHearマイク処理技術により、スマートフォンなどにおける高効率・高精度なノイズ抑制が実現されている。
さらに、同研究所は生成モデルや大規模言語モデルの開発にも注力しており、欧州発の多言語AIモデルTeuken-7Bはその代表例である。同モデルは欧州連合の24の公用語で訓練され、欧州の厳格なデータ保護基準にも準拠している。
[DW編集局]