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- 国・地域名:
- ドイツ
- 元記事の言語:
- ドイツ語
- 公開機関:
- 国家科学アカデミー・レオポルディーナ
- 元記事公開日:
- 2025/08/18
- 抄訳記事公開日:
- 2025/09/18
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ナチ時代における倫理に背反した医学研究:レオポルディーナとマックスプランク協会が科学研究と追悼のための被害者データバンクを公表
- 本文:
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(2025年8月18日付、国家科学アカデミー・レオポルディーナの標記発表の概要は以下のとおり)
ナチ時代には数万の人々が強制的な医学研究の犠牲となった。被害の検証にとっての重要なアプローチは、個々の被害者の状況を可視化することと、その人々の名誉と歴史的意義を取り戻すことにある。マックスプランク協会会長のクラーマー教授とレオポルディーナ会長のロッケンバッハ教授は、ナチの非倫理的医学研究の犠牲となった人々の名前と経歴を体系的に照会できるオンラインデータバンク公開の記者会見で、これらの点を強調した。本データバンクは追悼と研究と歴史的考察に役立つことが期待され、マックスプランク協会の支援する連携プロジェクト「ナチ政権下の不法行為としてのカイザー・ヴィルヘルム協会所属の研究所における脳研究」の一環として構築された。
データバンクには研究の犠牲となった約16.000件のプロファイルが含まれ、まだ研究の終了していない13,000件のプロファイルもある。一般の人もこのデータバンクを利用して親族を探すことが可能で、犠牲者の名前とデータは公開され、追悼の場としての重要な機能も果たす。
このデータバンクは英国オックスフォード・ブルックス大学のワインドリング教授(Prof. Paul Weindling )とそのチームによる包括的な研究の成果に基づいている。教授の研究目的は、ナチズム時代における科学と医学の歴史の解明である。
ナチの支配下では、マックスプランク協会の前身であるカイザー・ヴィルヘルム協会の研究者は、安楽死や戦争捕虜、ナチス支配地域の民間人、ナチスによる裁判の犠牲者などの脳組織を標本として収集した。これらの標本は第二次大戦終了後も長いこと科学研究の目的として利用されてきた。本研究プロジェクトでは、これらの脳組織の収集、保存、研究の歴史的全体像を検証した。
「歴史は、ひとたび全体主義国家が人種イデオロギーと狂信主義により人間的な価値システムを否定する時、人間が何をすることになるかをに示している。科学はそのことを想起し、倫理的ガイドラインを遵守しなければならない。現在の高度に専門化された科学研究は人間を常に視野に入れておく必要がある。カイザー・ヴィルヘルム協会の長い歴史を前身に持つマックスプランク協会には特に当てはまる」とクラーマー会長は語っている。
[DW編集局]