[本文]

国・地域名:
英国
元記事の言語:
英語
公開機関:
科学・イノベーション・技術省(DSIT)、デジタル・文化・メディア・スポーツ省(DCMS)
元記事公開日:
2025/08/22
抄訳記事公開日:
2025/09/29

調査報告:英国企業における先進技術導入の障壁と促進要因

Barriers and Enablers to Advanced Technology Adoption for UK Businesses

本文:

(2025年8月22日付、科学・イノベーション・技術省(DSIT)、デジタル・文化・メディア・スポーツ省(DCMS)発表の標記調査報告の概要は以下のとおり)

[編集局注:標記調査は、DSITとDCMSの支援を受けて、Verian UK(マーケティング・コンサルティング業のカンター・グループから2023年11月に独立した機関の英国支部)が、イノベーション・研究コーカス(UKRIの投資戦略に貢献する専門家ネットワーク)の学識者との連携を基に行ったものである。]

英国では、2008年の金融危機以来、労働力の低下や全要素生産性の伸びの低迷が続き、人工知能などの「先進技術」は生産性の向上を促進し得るため、その導入拡大への関心が高まっている。

本調査では、4つの技術クラスタ(①情報通信技術、②先端コンピューティング技術、③先端製造技術・材料、④エネルギー・環境技術)における先進技術導入に焦点を当てて、英国全体の企業における導入の障壁や促進要因に関する質的研究を実施した。

■ 促進要因と制約要因:企業の導入意思決定を左右する主な要因

本調査により、先進技術導入に関する企業の意思決定は複雑であり、複数の関連要因の動的な相互作用によって形成されることが明らかになった。単独で技術導入決定に最も影響を与える決定要因は存在しなかった。むしろ、企業は、導入の意思決定に対してプッシュ型およびプル型の力として作用する複数の促進要因と制約要因を経験しており、これらの影響の受け方は企業間で大きく異なる。全体的には、企業リスク・プロフィール、ユースケースの明確さ、手頃なコスト、規制、が導入意思決定に強い影響を与えることが広く報告された。

調査で特定された促進要因と制約要因は、主要な要因群の両極として存在する傾向があり、システムアプローチを採用した本調査では、19の要因が特定された。これらは、技術、組織、外部環境という3つのレベルで出現し、相互に高度に関連している。そして、技術による課題解決への意欲(willingness)、変革能力(capability)、リソース投入能力(capacity)の3カテゴリに係るモデルを適用してこれらの要因について分析したところ、特定された19の要因はいずれも、先進技術導入に関する意思決定における促進または制約要因として、異なる方法で作用し得ることが判明した。

■ 調査サンプル全体における企業経験のばらつきの理解

本調査では、対象とした4技術クラスタについて、19の要因のどれが技術導入の促進または制約要因としてより顕著な役割を果たすかを調べた。さらに、5つのセクター(製造業、小売業、金融業、プロフェッショナル・サービス、クリエイティブ産業)ごとに導入または制約要因の関連のあり方が異なるが、市場からの圧力はセクター共通に要因として影響を及ぼすことを確認した。また、6つの企業タイプ(先駆企業、戦略的導入企業、実利的追随企業、消極的導入企業、技術抵抗企業、超然とした伝統主義企業)を見出し、企業タイプごとに有効な介入や支援が異なる可能性があることへの理解の重要性を認識した。

■ 先進技術の企業導入を促進する効果的な政策介入に関する結論

上記の19要因のどれが最も重要であるか、またそれが企業の意欲・変革能力・リソース投入能力にどのように影響するかを把握することは、先進技術導入促進に最も効果的な政府介入策の決定に資する。英国全体の企業において、上述の3カテゴリすべてに作用する介入が必要であることが本調査で示された。

企業が先進技術導入を促進する上で最も効果的と考えられる主要介入策の4類型は以下のとおりである。
・市場介入(すなわち規制や基準の変更)
・政府による企業向けスタッフ研修の支援
・先進技術のメリットを広く周知するための情報提供
・資金的インセンティブ

[DW編集局]