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- 国・地域名:
- ドイツ
- 元記事の言語:
- ドイツ語
- 公開機関:
- ヘルムホルツ協会(HGF)
- 元記事公開日:
- 2025/08/28
- 抄訳記事公開日:
- 2025/10/08
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ハードを待たずに未来を描く:KITの量子コンピューター向けソフト開発
- 本文:
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(2025年8月28日付、ヘルムホルツ協会(HGF)の標記発表の概要は以下のとおり)
まだ存在しないコンピューターのプログラムはどのように作るのか。カールスルーエ工科大学(KIT)の研究者は、新たなプロジェクトでこの課題に取り組み、いまだ実用段階に至ってはいない量子コンピューター向けのソフトウェアを開発している。このソフトウェアは今後数十年間は使われないかもしれない。しかし、ハードウェアが利用可能となった時には即座に必要となる。なぜなら、適切なプログラムがなければ、どれほど強力な量子コンピューターも無用の長物にすぎないからだ。
「大きなブレークスルーが訪れる時に備え、準備を整えておきたい」とKITの情報安全性・信頼性研究所(KASTEL)のシェーファー(Prof. Ina Schaefer)教授は語る。量子コンピューターは材料研究やサプライチェーンの最適化といった極めて複雑な課題における希望の星と見なされているが、現状ではほとんど実験室内の壊れやすい実験にすぎない。最大の問題は実用性に乏しい点である。大手テクノロジー企業が開発する現行機は電卓よりも計算能力が低く、故障が多く、計算結果も信頼性に欠ける。
すでにQiskitやQ#といった専用プログラミング言語は存在するが、これらは初期のコンピューター言語のようにハードウェアに極めて近い。つまり、開発者は量子コンピューター内部での個々の計算ステップを詳細に理解する必要がある。自動的な誤り訂正機能や現代的なグラフィカルユーザーインタフェースはまだ乏しく、1950年代におけるパンチカードやアセンブリ言語によるプログラミングの状況と類似しているが、基盤技術ははるかに高度で要求が厳しい。
将来の実用化に備え、9月1日に発足した量子重点プログラム「量子ソフトウェア、アルゴリズム、システムズ(Quantum Software, Algorithms, and Systems)」とQuSolプロジェクトは、学術界と産業界の研究活動を結集する。KITの研究者は応用志向のソフトウェア開発に注力し、物流、材料研究、暗号といった分野での応用基盤を構築している。重点プログラムはドイツ研究振興協会(DFG)が、QuSolプロジェクトは連邦研究技術宇宙省(BMFTR)が支援している。
[DW編集局]