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- 国・地域名:
- フランス
- 元記事の言語:
- フランス語
- 公開機関:
- フランス学術学会カレッジ(Collège des sociétés savantes)
- 元記事公開日:
- 2025/09/14
- 抄訳記事公開日:
- 2025/10/17
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フランス学術学会カレッジ、公的研究資金制度の危機を指摘し改革提案を提示
- 本文:
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(2025年9月14日付、フランス学術学会カレッジ(Collège des sociétés savantes)による標記発表の概要は、以下のとおり)
「複数年研究計画法」(LPR)(2021~30年)成立からほぼ5年、2026年度予算が緊迫する状況でまもなく審議を迎える中、フランス学術学会カレッジ(Collège des sociétés savantes)は、公的研究資金に関する大規模調査の結果を発表した。
本調査は、国家レベルの戦略的運営から機関間・機関内の資金配分メカニズム、日常的資金の活用に至る資金チェーン全体について、研究関係者の感触を把握することを目的としている。
2,200人超の研究者が参加し、67問に回答、自由記述は8,000件超にのぼる。回答者の年齢・地位・専門分野・所属の多様性により、精緻な分析が可能となっている。
調査は、継続的(経常的)な資金が研究時間の確保、探索的・リスクを伴う研究の促進、チームの安定化に極めて有効であることを示す。ANR(フランス国立研究機構)や欧州の公募は、強化された経常資金を補完し、大規模共同研究や学際的研究、大型設備の整備に有用である。地域・国家の共同利用プラットフォームや大型施設は制度の強みと評価され、地方自治体は地域インフラへの支援や博士課程契約の提供で重要な役割を担う。「企業研究協約制度」(CIFRE)は公的研究機関と企業の連携を促進する上で有効である。
一方で、個別の利点を超えて厳しい総合評価が示された。
▽ほぼ満場一致の不満:現在の公的研究資金制度に満足する回答者は15%未満で、制度は構造的に資金不足、短期志向で流行に左右されやすく、不公平で、過度に時間を浪費させ、しばしば不透明で、最も革新的な研究を阻害すると評価されている。
▽国際的な後退:60%超が、特に生命科学、化学、医学でフランスの研究の国際的地位が低下していると指摘している。国内では志望者減少、国際的には知名度低下や特定分野での人材流出が顕著となっている。
▽国家戦略の欠如:科学者らは、細部にこだわる一方で長期的視野を欠く行政主導の運営を批判し、政治が公的研究の社会的寄与を十分に理解していないと警告している。
▽労働条件の悪化と研究の意義喪失:行政手続きの過重や不必要に複雑な手続き、資金不安が研究者の健康に及ぼす影響を強調している。
調査を通じ、科学界は一致した見方と合意ある提案を示した。主な提案は、国内総生産(GDP)の1%を公的研究に充てる欧州としての目標の達成、研究の経済効果を超えた社会的貢献の評価、経常的資金の大幅な増額(常勤人件費を除く資金の少なくとも50%)、プロジェクト公募の採択率の向上、常勤の研究・支援人員の大規模採用、行政管理の簡素化・柔軟化などである。
[DW編集局]