[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
欧州委員会(EC)
元記事公開日:
2025/09/09
抄訳記事公開日:
2025/10/22

欧州委、2025年戦略フォーサイト報告書を発表

2025 Strategic Foresight Report

本文:

(2025年9月9日付、欧州委員会(EC)発表の標記報告書の概要は以下のとおり)

欧州委員会は2025年9月9日、「2025年戦略フォーサイト報告書」を発表した。報告書では、将来のリスクを予見し、持続可能で公正かつ民主的な変革を通じて制度や社会を強化し前進する能力として「レジリエンス2.0」を提唱した。これは、危機に受動的に対応するのではなく、積極的かつ先見的に未来を見据えることで、不確実性と混乱の時代においてもEUが繁栄し続けるための概念である。「レジリエンス2.0」は、EUが直面する特有の課題への対応を必要としている。報告書は、欧州準備連合戦略(European Preparedness Strategy)に基づいている。

EUが直面する特有の課題は以下の4点に整理される。

▽外部依存、重要原材料・デジタル・エネルギー分野の脆弱性、地政学的リスク、市場集中により、戦略的自律性と経済競争力の両立が困難となっている。
▽急速な技術進展およびAIの普及に伴い、セキュリティ、個人の権利、プライバシー、社会的信頼、環境に対するリスク管理が不十分である。
▽高齢化、地域格差、移民、健康・メンタルヘルス問題、気候・環境変化が複合的に作用し、人々の福祉と社会的レジリエンスを脅かしている。
▽法の支配や報道の自由の侵害、偽情報、選挙干渉、ソーシャルメディア依存、アルゴリズムによる偏向により、民主主義の信頼性と健全性が揺らいでいる。

これらの課題に対応するため、EUは2040年に向けて以下の8つの行動分野を提示している。

▽対外行動の一貫性を確保し、長期的視野に立脚した信頼されるグローバル・パートナーとしての地位を確立する。
▽内外の安全保障を強化し、軍事・経済・技術・気候を統合した先見的アプローチを展開する。
▽研究・イノベーションを基盤として技術を活用し、AIを含む主要技術に関する倫理的かつ科学的根拠に基づくガバナンスを主導する。
▽経済競争力を強化するとともに、供給網の強靭化および戦略的セクターの発展を通じて長期的な経済レジリエンスを確立する。
▽公平かつ持続可能な移行を支え、生活の質を高めるため、社会的市場経済を基盤とした福祉と社会保護を強化する。
▽教育とスキルの再構築を進め、人口動態および技術変化に対応可能な労働市場と社会政策を整備する。
▽偽情報や分断を抑止し、法の支配と市民社会への信頼を基盤に、民主主義を共通の財として強化する。
▽人口変動を社会変革の契機と位置づけ、世代間の公正を確保しつつ、持続可能な社会を次世代に継承する。

[DW編集局]