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- 国・地域名:
- 英国
- 元記事の言語:
- 英語
- 公開機関:
- 科学・イノベーション・技術省(DSIT)
- 元記事公開日:
- 2025/10/30
- 抄訳記事公開日:
- 2025/12/04
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調査分析:公的R&D投資の価値
- 本文:
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(2025年10月30日付、科学・イノベーション・技術省(DSIT)発表の標記文書の概要は以下のとおり)
エビデンスを包括的に分析したDSITの評価により、平均して1ポンドの公的研究開発(R&D)投資は、長期的に英国に8ポンドの純経済的利益をもたらすことが明らかになった。
■ 公的研究開発が重要な理由
研究開発(R&D)とそれによって創出される新しいアイデアや技術は、長期的な経済成長の基盤である。英国の公的研究開発は、複数の経路を通じて英国に大きな利益をもたらす。これにより、生産性の向上、高品質な雇用の創出、国民の健康および生活の質の改善が実現し、さらにネットゼロへの移行支援から、英国の主権を守る防衛能力の強化に至るまで、幅広い戦略的便益がもたらされる。■ エビデンスに基づくアプローチ
DSITは、R&D投資の決定が確固たるエビデンスに基づいていることを保証している。同省は、グリーンブック[編集局注:財務省がまとめた評価ハンドブック]に沿って投資の価値を経済成長および国民への利益の観点から定義し、研究開発プログラムを定期的に見直し・評価することで、有効な手法を把握し、その価値を最大化している。プログラム・レベルの評価は、公的研究開発の価値を示す重要なエビデンスであり、公的研究開発投資が高い収益をもたらすことを実証している。過去の主な事例は次のとおりである。・Innovate UKの助成金は、1ポンド当たり平均3ポンドの企業便益を創出しており、知識の波及効果や民間投資の呼びかけを含めると、この額はさらに増加する。
・知識移転パートナーシップ(学術パートナーの支援を受けてビジネス関連分野の新卒者を企業に派遣する制度)は、1ポンド当たり4.20~5.50ポンドの純便益を生み出している。
・英国南極研究所による長期的な観測活動により、オゾンホールが早期に発見され、農作物被害および皮膚がんの症例の減少を通じて、英国は推定61億ポンドを節約した。
DSITはエビデンスのベース構築を続けており、新しいプログラム評価については定期的にUKRIのウェブサイトで発表され、DSITによってGovernment Evaluation Registryに蓄積されることになっている。■ 公的R&Dポートフォリオ全体の評価
DSITは、個別プログラムを超えて、公的研究開発ポートフォリオ全体の収益を評価している。このポートフォリオ・レベルのアプローチは、R&Dの経済的影響をより包括的に捉え、1ポンドの公的研究開発投資に対して8ポンドの収益見積もりを導き出している。
▽英国の公的研究開発による生産性向上:エビデンスは、英国の公的研究開発投資が国内の生産性を向上させることを示している。
▽公的R&Dによる民間R&D投資の促進:公的R&D投資は、民間のR&D投資をも促進し、それにより企業に実質的な利益をもたらす。
▽レバレッジドな民間R&D投資の波及効果:レバレッジドな民間R&D投資は多大な事業的便益を生み出す。また、R&D投資は、イノベーションが経済全体に広がる場合や、サプライチェーンの革新を通じて生産性が幅広く向上する場合には、投資企業を超えた知識のスピルオーバーをもたらす。■ 経済的利益以外のその他の効果
研究開発プログラムによる重要かつ多様な効果をすべて把握するには、さらなる検討が必要である。たとえば、本報告書では民間セクターの生産性への影響は評価されているが、データの制約により、公共セクターの生産性向上効果は現時点で十分に把握されていない。 [DW編集局]