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- 国・地域名:
- フランス
- 元記事の言語:
- フランス語
- 公開機関:
- 国立科学研究センター(CNRS)
- 元記事公開日:
- 2025/11/03
- 抄訳記事公開日:
- 2025/12/09
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CNRS北京事務所長「中国との関係は深められる」
« Le CNRS peut améliorer la relation scientifique franco-chinoise »
- 本文:
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(2025年11月3日付、国立科学研究センター(CNRS)の標記発表の概要は、以下のとおり)
CNRSは、2025年11月、中国代表事務所開設30周年を迎えるに当たり、代表団が中国を訪問し活発な仏中協力を再確認することとしており、この機会にフェルマン・クエバス同事務所長に仏中協力の現状と展望を聞いた。
――中国代表事務所の責任者としてこの地域でのCNRSの存在感をどのように強化するのか?
「2024年はフランスと中華人民共和国の外交関係樹立60周年である。1978年には世界でも有数の研究機関である中国科学院(CAS)との間で初の枠組み協定が締結され、その後、CNRSと中国の協力関係は発展し続け、1995年には北京に代表事務所が開設された。現在3名で運営され、CNRSの科学者や大学をはじめとするすべての協力パートナーを支援している。
今年60周年を迎え中国と欧州の新たな科学協力が求められており、国益を守りつつ、開かれた協力を促進するため、中国におけるCNRSの影響力を発揮したい。中国は、世界をリードする科学論文の生産国であり、国際的にも重要な研究パートナーとなっている。フランスに来る中国人学生が多い一方、フランスの博士課程学生が中国に行くことはほとんどない中で、仏中間の研究者交流や、フランス人学生の人材育成を促進していきたい」
――新型コロナ感染症の流行終結後、中国との協力が活発化しているが、CNRSと中国のパートナーとの関係はどのような現状か?
「新型コロナ感染症の流行終結後、中国は国際的活動を再開したが、米国との商業的な対立関係が深刻化する中で、長年の科学的関係を持つ欧州、特に仏中関係が注目されており、フランスは、中国から得られる利益を踏まえ、中国からのアプローチに前向きに対応している。
両国の外交と科学の交流をみると、マクロン大統領と習近平国家主席は互いに国賓として訪問し、また、CASの代表団が中国の関係機関とともに訪仏し、プティ理事長も訪中している。
理事長の訪問は、現場での充実した協力を物語っており、共同研究所、国際ネットワーク、国際研究プロジェクトに加え、CASと提携した基礎・応用数学、素粒子物理学、生物多様性に関する新しいネットワークが立ち上げられた。また、フランス科学アカデミーの協力でシンポジウムが共催されるなどCASとCNRSは、それぞれ世界有数の科学論文生産者として互いに相応しい役割を果たしてきている。
一方、CNRSは中国の主要なフランスのパートナーであり、仏中の全共著論文の70%を占めているが、フランスにとって中国はアジア一の国際パートナーではあるものの、中国にとってフランスは世界で6番目、欧州では英、独に次ぐ3番目の国際パートナーに止まっていることから、大きな発展の余地があり、中国との歴史的な関係が深いCNRSは、仏中科学関係を改善する大きな可能性を秘めている」
――地政学的対立は、仏中科学協力にどのような影響を与えるか?
「地政学的状況は今後とも悪化し不確実性が高まるかもしれないが、仏中科学研究は発展の可能性を秘めている。25年間の水素貯蔵材料に関する基礎研究協力の実績からも個人的な自信がある。
今こそ、欧州が生物多様性、気候変動、食料、農業の分野で実現した対等で開かれた信頼関係を可能なすべての分野で築く時であり、特に技術的価値の高い研究など機微なテーマについては必要に応じて管理すればよい。
国家の戦略的利益を守ることは不可欠であるが、中国との科学協力を強化することで得られるものは大きい」
[DW編集局]