[本文]

国・地域名:
ドイツ
元記事の言語:
ドイツ語
公開機関:
ドイツ航空宇宙センター(DLR)技術熱力学研究所)
元記事公開日:
2025/10/20
抄訳記事公開日:
2025/12/11

低アルカリ条件下での高性能水電解を実現するイオン溶媒膜の画期的開発

Bahnbrechende Entwicklung in der Wasserstoffforschung: Neue ionenlösende Membran ermöglicht Rekordleistung bei niedriger Alkalinität

本文:

(2025年10月20日付、ドイツ航空宇宙センター(DLR)技術熱力学研究所)の標記発表の概要は以下のとおり)

ドイツ航空宇宙センター(DLR)が参加する国際研究チームは、著名専門誌「ネイチャー・エナジー(Nature Energy)」において、水電解技術の発展に関する画期的研究を発表した。論文タイトルは「低アルカリ性イオン溶媒膜水電解用スルホン化ポリベンズイミダゾール(Sulfonated polybenzimidazole for low-alkalinity ion solvating membrane water electrolysis)」である。

本研究では、イオン溶媒膜に基づく新たな水電解方式が開発され、低い水素化カリウム(KOH)濃度下で極めて高い電流密度を示すという記録的性能が実証された。この成果は従来システムに対する顕著な技術的進展であり、電解装置のコスト低減に大きな可能性を開くものである。

従来のアルカリ水電解装置は、効果的なイオン輸送と安定的運転のため、15〜30重量%KOHといった高密度電解液を必要とする隔膜に依存してきた。これに対し、新たに開発されたイオン溶媒膜は、著しく低いKOH濃度でも高い電流密度を維持できるうえ、架橋剤を用いずに製造可能である。その結果、135 mS cm⁻¹(1 M KOH、室温)という高いイオン伝導性と、80℃で6カ月間の試験において劣化が観察されない優れた化学安定性が確認された。

長寿命・高効率・経済性を兼ね備える本膜は、低アルカリ条件下で従来のアルカリ電解が抱えてきた性能上の制約を克服し、将来的なキロワット級への応用に向けた重要な前進となるとともに、グリーン水素のより広範な普及を後押しする技術基盤を提示している。

本研究は、DLR技術熱力学研究所を中心に、韓国科学技術研究院(KIST)、デンマーク工科大学、ポーランドのヤギェウォ大学など複数の著名研究機関による国際共同研究として実施された。

[DW編集局]