[本文]

国・地域名:
ドイツ
元記事の言語:
ドイツ語
公開機関:
ドイツ航空宇宙センター(DLR)
元記事公開日:
2025/11/07
抄訳記事公開日:
2025/12/26

ドイツ航空宇宙センター、世界鉄鋼産業のCO2削減可能性を分析 〜CCS・水素・電力利用の技術シナリオ〜

DLR-Studie untersucht Defossilisierung der weltweiten Stahlindustrie

本文:

(2025年11月7日付、ドイツ航空宇宙センター(DLR)の標記発表の概要は以下のとおり)

ドイツ航空宇宙センター(DLR)は、世界の鉄鋼産業において温室効果ガス排出を大幅に削減するための方策を、複数の技術導入シナリオに基づいて検討・評価した研究結果を公表した。鉄鋼生産は世界全体の温室効果ガス排出量の約9%を占めており、脱炭素化は地球温暖化対策の中核的課題とされる。本研究では、CO2回収・貯留(CCS)、水素利用、電力を用いた鉄製造という三つの技術を軸に、将来の排出削減効果を体系的に分析した。

現在主流の高炉製鉄では、コークスを用いるため鋼1トン当たり1.6~2.2トンのCO2が排出される。既存高炉へのCCS導入は、短期的には排出削減を可能にするものの、長期的な削減ポテンシャルは限定的であり、根本的な解決策とはなり得ないと評価されている。これに対し、製造プロセスの電化は、より大規模かつ持続的な排出削減を実現する鍵と位置付けられる。

技術的選択肢としては、再生可能エネルギー由来の水素を用いた製鉄が、炭素を含むコークスを代替する手法として有望視されている。また、鉄鉱石を電力で直接電解する「電解採鉱(Electrowinning)」は、技術成熟度は低いものの、電力を直接利用できる点でエネルギー効率上の利点を持つ可能性が示されている。

シナリオ分析によれば、世界の粗鋼生産量は2020年の約16億トンから、2060年には26億トン超へ増加する可能性がある。この前提の下では、2060年までに達成可能な排出削減率は最大でも約67%にとどまり、CCSを含むコスト最適化シナリオでは残余排出が不可避となる。その結果、鉄鋼産業全体として1.5℃目標に整合するCO2排出予算を満たすことは困難と結論付けられている。水素による一次製鉄への転換を進めても削減効果は十分とは言えず、一次鋼生産の抑制やリサイクル拡大を含む、より迅速かつ抜本的な脱化石燃料化が求められる。さらに、低排出型製鉄技術の導入は再生可能電力需要を大幅に増加させ、ドイツでは2050年に鉄鋼業の電力需要が現在の最大15倍に達する可能性が示されている。

[DW編集局]