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- 国・地域名:
- ドイツ
- 元記事の言語:
- ドイツ語
- 公開機関:
- マックスプランク協会(MPG)
- 元記事公開日:
- 2026/03/03
- 抄訳記事公開日:
- 2026/04/01
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生成AI時代における著作権とジャーナリズム―ドレクスル所長による補償モデルの提案
- 本文:
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(2026年3月3日付、マックスプランク協会(MPG)の標記発表の概要は以下のとおり)
法学者ドレクスル(Josef Drexl)は、押し寄せる人工知能(AI)に対してジャーナリズムを保護するための新たな補償モデルを提唱する。
本報告の要点:
1. 人間の創造性の価値:MPGイノベーション・競争研究所のドレクスル所長は、AIは人間の創造性に依存しており、民主主義にとって人間の思考は不可欠であると強調する。ジャーナリストはAIでは代替できない中核的役割を果たしている。
2. 新たな補償モデル:AIプロバイダーは、著作権の利用の有無にかかわらず、一定の料金を著作権者に支払うべきである。
3. ジャーナリストのための料金徴収:ジャーナリズムの質を支援し、国家における第四の権力としてのジャーナリストを強化するため、放送受信料のような仕組みで徴収することを提案する。2025年、音楽著作権管理団体(GEMA)はミュンヘン第一地方裁判所においてオープンAIに対して勝訴した。同判決は、AIモデルの利用者が歌詞テキストをプロンプトにより再生できる場合、著作権法上の複製に該当すると認定した。ドレクスル所長は、この勝訴は問題の本質を取り違えていると指摘する。すなわち、このような「記憶」による複製は実際にはほとんど生じていない。現実には、生成AIの仕組みにより「記憶」は抑制され、全く新たな内容が生成される。問題の核心は、AIが人間の創作物をコピーせずに市場から排除している点にある。ここで重要なのは、イミテーション競争(既存作品のコピー)と代替競争(同等の機能を有する新規生成物による代替)を区別することである。著作権法は前者には対応するが、後者は許容している。
生成AIは人間の創造性に依存する技術である。AIが生成したデータで学習を繰り返すモデルは幻覚(ハルシネーション)を累積し、誤りを増幅させ、全体の品質が劣化する可能性がある。民主主義には人間の思考が不可欠である。ジャーナリストは第四の権力として情報発信にとどまらず、不正を発見し統治権力を抑制する。文化も同様に重要な機能を有する。「生成AIにはこれができない。」とドレクスル所長は強調する。
ドレクスル所長は三つの制御レベルを提案する。すなわち、現行システムの最適化、新たな「AI活用権」、および個別の著作物利用から独立した「正当な補償権」モデルである。後者は、生成AIの商業プロバイダーと運営者は著作権者に配分する料金を支払うべきとされる。配分は過去5年間の分配実績に上乗せする形が望ましい。これは、「高品質な生成AIモデルは人間の創作物による学習の蓄積によって成立している」ため、開発者にとっても受容可能である。
この方法の長所は、挙証と長期交渉が不要である点にある。また、自身の作品がAI学習に使用されなかった著作権者も、生成AIとの競争にさらされる可能性があるという意味で補償の対象となる。
ドレクセル所長は、著作権法のみではこの問題は解決できないと強調し、市民から放送受信料に類する形で資金を徴収し、ジャーナリズムに配分することを提案する。有権者が毎年、どの出版社が品質およびジャ―ナリストへの最低報酬基準を維持しているかを基準に配分先を選択する仕組みである。これにより、生成AIによる合理化に対抗する動きを形成できる。
[DW編集局]