[本文]

国・地域名:
英国
元記事の言語:
英語
公開機関:
下院科学・イノベーション・技術委員会
元記事公開日:
2026/07/07
抄訳記事公開日:
2026/08/18

科学外交:主権、戦略、世界的な競争

Science diplomacy: Sovereignty, strategy, and the global race

本文:

(2026年7月7日付、英国議会下院科学・イノベーション・技術委員会の標記報告書の概要は以下のとおり)

近年、地政学的情勢が一変している。ウクライナや中東での戦争、そして米国政権が確立された規範を繰り返し覆してきたことが、同盟関係の分断を招いている。急速な技術の進歩と相まって、このことは科学外交の重要性をかつてないほど高めている。英国は科学外交において大きな野心を抱いているものの、歴代の英国政府は変化のスピードについていくのに苦慮してきた。特に米国が影響力を縮小させる中、科学技術分野の人材を呼び込もうとする取り組みには意欲が欠けている。また、研究開発支出への援助削減は、世界の保健衛生や科学的発見を支える投資からの近視眼的な撤退となりかねない。米国とのライフサイエンス分野における合意は、自国の同分野を優位に立たせようとするトランプ政権の意向によって推進されてきた。革新的な新薬への支出拡大は英国の患者にとって有益となり得るものの、英国の医療予算の枠内でそれらの費用をどのように賄うのかについては、依然として不透明なままである。
本報告書は、政府の科学技術外交の取り組みについて、主要な戦略的目標として「技術主権」が掲げられているという文脈をふまえ、包括的に検討することを目的としている。科学外交を成功させるためのいくつかの重要な要素について検討し、政府が包括的な戦略を策定・提示することを推奨した。政府はその際、優先すべきパートナー、技術、目指すべき成果を明確に定義し、それらがより広範な目標とどのように整合するかを示す必要がある。
英国は、世界トップクラスの科学や初期段階のイノベーションを生み出す点において長年にわたり強みを有してきたが、それらを、世界をリードする企業へと成長・拡大させることには、しばしば苦戦してきた。専門ファンドの不足、成長段階における主導的な投資家の不在、さらには英国市場の規模といった構造的な問題により、多くの有望な科学技術上の画期的成果が海外で事業化されている。
このような戦略の欠如や商業化能力の限界に加え、国際連携に対する英国の伝統的な開放的姿勢に見合うだけの、関連リスクを管理する強固な枠組みが整備されてきていない。また、研究セキュリティに関する政府の方針は、現時点では、英国の知的財産を保護し、敵対的な主体による悪用から研究を守るために十分明確かつ実効性のある枠組みとはなっていない。UKバイオバンクにおけるセキュリティ上の不備は、研究・イノベーションをめぐる連携が悪用に対して脆弱であることを露呈させた。しかし、政府が現在とっている「主体を問わない(actor agnostic)」アプローチは、大学部門が抱える根深い構造的課題に対処しつつ現場でリスク管理を担う研究者に対し、明確かつ実践的な指針を提示するまでには至っていない。
我々は、科学、および外交においては最上位のリーグに属しているが、明確な戦略と政府横断的な調整を欠いているために、科学外交においてどの位置に立っているのかは不明である。

[DW編集局]