[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
高等教育・研究省(MESR)
元記事公開日:
2013/10/09
抄訳記事公開日:
2013/11/11

イノベーションに関する議会初会合

Premières rencontres parlementaires pour l'innovation

本文:

高等教育・研究省の2013年10月9日標記報道発表では、同日のイノベーションに関する議会初会合の開催に当ってのフィオラゾ高等教育・研究大臣の発言内容を伝えている。概要は以下のとおり。

フランスでは10年来国内総生産に占める研究開発の割合が2.26%と停滞しており、「リスボン戦略」が定めた3%には遠く、ドイツの2.9%、韓国の4.4%、日本の4%からも程遠い。この数字それ自体が研究開発に関する投資を増やす必要性を示している。その意味で、この間の予算額は維持されている公的投資、第2段階の投資がこのほど決定された「将来への投資」、研究費税額控除の維持、フランスの成長に関する国家協約で肉付けされている欧州の「Horizon 2020」プログラムとの連繋は非常に心強い兆候である。

[基礎研究の重要性]

フランスを「イノベーションでナンバーワン」の国にしようとするなら、研究開発の増強はもちろんであるが、研究とイノベーションとの繋ぎを再考することも関係する。イノベーションがすべて研究や技術に由来するものではないが、画期的なイノベーションの各々の上流側には研究の努力が存在する。1940年代に素数に関して展開された基礎研究は、暗号通信法に関する技術イノベーションの元となり、それがなければ今日の電子情報環境は存在しなかった。往々にして氷山に隠れた側面であるが、必要不可欠な側面である。研究は、経済的インパクトが明らかな画期的イノベーションの元になる必要かつ基本的な創造の場である。

そういう理由で基礎研究は聖域とすべきである。基礎研究はまた自由でなければならない。素数に関する研究から数十年遅れて基礎的な技術的応用が誕生することになると前もって想像することは困難であった。純粋に短期的収益性を理由にこのような研究領域が犠牲になると、どういうことが起こるであろうか。公的研究の聖域化は将来の雇用創出であり、世界レベルでのフランスの競争力確保である。この点についてフランスはかなり強力な手段を備えている。研究者の卓越性に加えて、ここ数年相当数のフィールズ賞、ノーベル賞、チューリング賞を数学、医学、化学、物理学、情報科学の領域で獲得しており、また人文社会科学を含むあらゆる分野の研究者が欧州研究会議の奨励金を多数獲得している。

[フランスにおけるイノベーションの課題と方策]

フランスは科学論文の発表では第6位で、免疫学、ゲノム、物理学、数学などの領域では第4位であるが、欧州経営大学院(INSEAD)によるとイノベーションに関してはフランスは世界で24位でしかない。研究とイノベーションとのこのような格差、そして両者の間の相互依存関係が見られないのは何故か。この格差を埋めてフランスをイノベーションに関して欧州の先駆者たらしめるにはどうすればよいか。

まずは文化的問題がある。フランス人のメンタリティは長期にわたり頑なすぎて、学術界・研究界・企業間の横の連携がが進まなかった。フランス企業による博士号所持者の採用率は低く、大半の職業社会で彼らの社会的地位が認識されていないことからも、それは明らかである。それ以外に教育の問題がある。学生の修得課程に企業経営教育が欠如していること、学問教育に比して技術・職業教育の成果の活用が不十分であること、学校教育と企業実習を交互に行う交互教育(alternance)の割合が小さい(大学で4%、高等教育全体で8%)こと、電子情報化やより双方向の教育が可能な新たな学習様式の活用が不十分であること、リスクを負って創造力を発揮しチームとして仕事をすることに価値を置く教育があまりに乏しいことなどであるが、このような方式では全体としてイノベーションに適した風潮を促すことにはならない。
イノベーション支援構造の複雑さとその円滑な流れの欠如、リスクキャピタルとりわけ開発資本が貧弱であることも忘れてはならない。

政府が推進する「成長、競争力、雇用のための国家協約」やその他の政府施策で上記課題の一部解決を図ろうとしているが、ここでは「高等教育・研究に関する法」に盛られたイノベーション促進策に絞って述べる。

・第1に知識移転を高等教育・研究の公共サービスの任務とする。本法では特許の公開とその活用に関しても新たな政策方針を定めている。公的基金の資金支援を受けた我々の研究の卓越した成果が他に略奪されないような方法で、知的財産権の保護と有効活用は欧州規模で推進される。それと併行して国際的なオープン性を一層推進しつつ、世界の他の地で生み出された発明や知識の有効利用も図る必要がある。
・もう一つの重要施策として技術研究の資金支援の強化がある。技術研究に公的研究開発支出の10%弱を充てる。発明とイノベーションとの間の最も効果的な橋渡しになるからである。またその横断的性格により、あらゆる領域で中堅・中小企業の組織体での技術イノベーション普及の効果的手段となる。
・さらには国家研究戦略を策定して重点課題を定めることも必要である。5月に研究戦略計画「France-Europe 2020」を発表したが、これにより医療、エネルギー、気候温暖化対策、持続可能な都市システムなど主要な社会的課題に対する施策を実行することができる。欧州の「Horizon 2020」プログラムや9月に発表された産業再興に関する34件のプロジェクトとも整合性があり、あまりに弱体なフランスの民間研究の役割強化にもなる。
・イノベーション文化の発展に寄与する人材育成の面で、本法では交互教育(alternance)の機会を倍増すること、学際性の増進、電子情報化に向けた目標計画などを盛り込んでいる。

[DW編集局+JSTパリ事務所]