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- 国・地域名:
- 英国
- 元記事の言語:
- 英語
- 公開機関:
- 教育省(DfE)
- 元記事公開日:
- 2017/02/24
- 抄訳記事公開日:
- 2017/05/29
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ジョンソン大臣による高等教育・研究法案についての発言
- 本文:
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教育省(DfE)の2017年2月24日付標記発表では、ジョンソン(Jo Johnson)大学・科学・研究・イノベーション担当大臣による高等教育・研究法案についての講演内容を報じている。高等教育・研究法案は上院での報告審議の段階に至っており、高等教育改革の次なる段階について述べている。特に議会での議論を慎重に吟味した結果、新たに議会に提出する修正案についても説明している。高等教育については、どんな経歴を持った若者にも、自らのポテンシャルを発揮する機会が与えられ、どこで何を習得すべきかについて適切な選択をするのに必要な情報が与えられるようにしなければならないとして、進路選択の多様化や取得単位の互換制度などについて述べている。以下は特に同法案の第3章、イノベーションおよび研究について述べた部分を抜粋したものである。
UKRI(英国研究・イノベーション)の初代最高責任者(Chief Executive)にマーク・ウォルポート(Mark Walport)卿が就任するという最近の発表は研究コミュニティに好意的に受け止められている。ウォルポート卿は優れた経歴を有することから、UKRIの設立をリードする責任者として特別に任命された。
研究・イノベーションへの投資がもたらす経済的利益を軽視してはならない。英国の科学・研究・イノベーションを政府の産業戦略の中核に位置付けているのはそのためである。またEUとの離脱交渉に際して首相の12項目の目標の一つとして英国を科学・イノベーションにとって最適な場所と位置付けるのもそのためである。英国および英国企業をイノベーションにおいて最先端とするのに必要な変革の実行、新製品の開発、および将来の課題への対処にとって、UKRIの成功は不可欠である。
英国の世界の指導的地位を堅持するべく、政府は2021年までに研究開発のファンディングに対してさらなる47億ポンドの投資を行う旨発表した。これはUKRIの創設により可能となったもので、1979年以降最大の投資増である。政府は今国会の会期末までに、設立されればUKRIが管理することになる新規の産業戦略チャレンジ基金など、研究・イノベーションに対して年あたり20億ポンドの追加投資を行う。
研究の独立性に関しては、政府は「ハルデインの原則」に則った確固たる取り組みを行っており、個々の研究提案に関する判定はピアレビューのプロセスを通して研究者らによってなされるのが最善であると一貫して述べている。今回初めてその点を法律に明記した修正案を提示した。その結果、今後どの政府であっても、助成金を出したりUKRIに指示を出すにあたっては「ハルデインの原則」を尊重する必要がある。
UKRIとその傘下に入る研究会議は政府から一定の距離を置いたかたちで運営され、重要な決定に当たっては代表権や自治権を有する。今回、政府は各研究会議に別々の予算を配賦するという修正案を提出して、この点を強化した。
UKRIに関連する重要な決定に際しては研究コミュニティが意見を求められることが重要であり、政府が将来各研究会議の名称やそのスコープの変更を決定する場合には研究コミュニティに助言を仰ぐことを法案の文面に入れるよう提案している。現行同様、このような変更は(議会両院の明確な承認を必要とする)賛成決議手続きに従った規則を通して実行されなければならない。
UKRIのガバナンスに関してその目的を明確にした一部修正案も提出した。英国の研究において慈善団体(チャリティ)の果たす極めて重要な役割を認識した上で、UKRI理事会メンバーの任命を行う際に政府が考慮すべき基準の中にはチャリティセクターの経験がなければならないことを明確にしている。また研究会議の評議会メンバー数の上限を9名~12名(議長を除く)に増やす修正案を提出しているが、これは各研究会議が必要とする活動範囲の管理により大きな柔軟性を認めるものである。
UKRIの強みの一つは、学術研究とInnovate UKがファンディングを実施する企業主導の研究との一体化を可能にする点である。Innovate UKによる企業向けミッションを明確かつ強調するため、企業によるイノベーション推進の必要性を重視するというUKRIの新たな要件を導入し、既存の要件を強化する。またUKRIは許可を得て共同事業に参画し、企業その他の革新的な資金調達先に投資できることを明確にするが、これらはすべて研究者やイノベーション企業の構想展開に役立つものである。
一部の研究者は、研究会議の目的に関する記述が経済分野や直接的な事業化という狭い範囲に絞られすぎているという懸念を抱いている。本法案の文面で人類の知識の最前線を前進させる重要性を認識すべきであることは明らかで、そのための修正案を提出している。
[DW編集局]