[本文]

国・地域名:
スイス
元記事の言語:
英語
公開機関:
スイス国立科学財団(SNSF)
元記事公開日:
2018/05/30
抄訳記事公開日:
2019/01/15

科学からスタートアップへ

From science to start-ups

本文:

スイス国立科学財団(SNSF)の2018年5月30日付のニュースで、標記の記事が掲載されている。以下にその概要をまとめる。
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科学研究から実際の製品やサービス創出を支援する新しいBridgeプログラム開始から1年半が経過したが、すでにその成果が表れている。

「Bridgeプログラムからの金銭的な支援がなければ、私の発見は良いアイデアの墓場へと葬られ、決して実現することはなかっただろう。」と、生物学者で新進企業家であるOlga Dubeyは話す。Dubeyは、博士課程の研究を進める中で、多くの果物や野菜に害をもたらす植物病原菌に有効な天然化合物を発見した。スイス国立科学財団(SNSF)とスイスのイノベーション機構(Innosuisse)が2016年12月に開始した資金供与のためのBridgeプログラムは、これまでに約40件のプロジェクトを支援している。

研究成果の実用化を検討したいと考える研究者は、最近までSNSFに頼ることはできなかった。SNSFの最大の使命は、研究を支援することだからである。またInnosuisse(前身は技術革新委員会)からの支援を受けられるほど十分には成熟していないプロジェクトも多かった中で、研究とイノベーションの間の中間的な段階を支援することでこうしたギャップを埋める役割を果たしたのが、Bridgeプログラムである。

1年前に始動したこのプログラムは、研究者とともに大きな成功を収めている。企業の役員からBridgeプログラムの概念実証評価委員会(Proof of Concept evaluation panel)の議長へと転身したMartin Müllerは「予想を上回る申請が寄せられている」と話す。

Martin Müllerは、「選ばれたプロジェクトの質から見ても、Bridgeプログラムの支援を得ていくつかのスタートアップが誕生するのは間違いない。」とも話す。ただその一方で彼は、研究をイノベーションへと進化させる過程には避けられないリスクがあり、失敗に終わるプロジェクトが出てくる可能性もあると述べている。「しかし最終的には、それも研究者にとっての失敗にはならない。彼らは、プロジェクトの過程で数々のスキルを習得できるからだ。今回は成果につながらなくても、次の機会には成功するだろう。これは、研究者の間に起業文化を育むというBridgeプログラムが目指すもう一つの目的である。」

Bridgeは、SNSFとInnosuisseが2016年12月に共同で策定したプログラムである。基礎研究と応用研究を結びつけるため、Bridgeプログラムは、科学的発見を社会と経済に活かすための努力を続けている。このプログラムに対して、2017年から2020年までの期間でスイス政府から7,000フランの予算が割り当てられている。Bridgeプログラムには、学士レベルの若手研究者を対象とした「概念実証(Proof of Concept)」と、経験豊富な研究者を対象とした「発見(Discovery)」という2種類の資金供与制度があり、これまでに約40件のプロジェクトが支援を受けている。

[JSTパリ事務所]