[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)
元記事公開日:
2018/12/13
抄訳記事公開日:
2019/03/07

米国はITERに留まり、燃焼プラズマ研究・技術国家プログラムを開始すべきである

To Benefit From its Investments in Fusion Energy, U.S. Should Remain in ITER and Initiate a National Program of Burning Plasma Research and Technology

本文:

2018年12月13日付の全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)による標記発表の概要は以下のとおりである。

「米国エネルギー省(DOE)は、国際熱核融合実験炉(ITER)プロジェクト(大規模で国際的な燃焼プラズマ実験)への参加と併せて、可能な限り低い資本コストでコンパクトな核融合発電パイロット・プラントを建設するための研究・技術を支援する国家プログラムを開始すべきである」とNASEMからの新しい報告書は述べている。同報告書では、主要な提言の実施に向けた戦略計画を提示している。

燃焼プラズマ(太陽や星にエネルギーを与えるプロセスと同様に、核融合反応によって非常な超高温に加熱された電離ガス)は、核融合エネルギーを生成するための重要な要件である。磁気核融合炉は、容器の中に閉じ込められた小型の太陽と考えることができる。核融合は、エネルギー源として、水・リチウム中に見られる重水素から豊富なエネルギーを生み出すため、環境面で有利である。燃焼プラズマ研究は学際的であり、流体力学や天体物理学のような関連分野での新しい知見につながる技術的・科学的成果をもたらし、大型超伝導磁石、真空技術、複雑な極低温システム、超精密構造、材料を取り扱うロボットシステムなどの我々の産業能力を高める。

米国の燃焼プラズマ研究に関する戦略計画委員会は、その中間報告書で、ITERからの撤退は科学者を国際的な取り組みから孤立させる可能性があると述べ、さらに核融合エネルギーに関する国家戦略計画の採択を提言した。ITERは、米国の燃焼プラズマ研究活動において中心的な役割を果たしており、燃焼プラズマの生成と研究が期待されている唯一の既存プロジェクトである。それは核融合エネルギー開発における次なる重要なステップである、と報告書は述べている。

ITERのパートナーとして、米国はITER向けに開発された技術から十分な恩恵を受けながら、わずかな財源しか提供していない。米国がその分担による利益を得るつもりであれば、核融合に関する国家戦略計画では、ITERでの経験と(信頼性が高くかつ経済的な核融合電力の開発に必要な)追加の科学・工学研究とを組み合わせるべきである、と報告書は述べている。

コンパクトなパイロット・プラントの建設に向けた国家研究プログラムを開始することによって、ITERの運用から学んだ知識と合わせて、今世紀半ばまでに発電を実証できるような、重要な成果を一定期間内に達成することが可能である。このプラント開発に新たに国が焦点を当てることの戦略的価値は、次のような短期・中期の核融合プログラムの研究優先順位の設定に役立つことである。

  • ITERで達成される電力密度を超えて核融合電力密度を高める
  • プラズマから逃げる熱を処理しながら、中断することなく運用する方法を習得する
  • 核融合向けの超高磁場超伝導マグネットを開発する
  • 熱抽出および核融合燃料中の水素の重同位体であるトリチウムの再循環に必要な材料と技術を開発する

上記委員会が構想しているのは、ITERで期待されているものと同様に発電可能であるが、サイズとコストがはるかに小さい装置で、基本的に発電を可能にするように設計改善を施したコンパクトなパイロット・プラントである。その目的は知識習得であるが、得られる知識は最初の商用核融合発電システムの設計に十分なものとなろう、と報告書は述べている。

ITERとのパートナーシップ継続とパイロット・プラントに関する国家研究プログラムの開始の両方を含む委員会提言の実施には、数十年間にわたり、年間約2億ドルの追加ファンディングを必要とする、と同委員会は予測している。

この最終報告に際し、同委員会は米国がITERから撤退するとした場合の次なるステップに関する戦略的指針を示すよう求められていた。委員会は、ITERがなければ、米国は発電用燃焼プラズマの生成・制御の経験を積むための代替手段を設計、認可、構築する必要があると指摘した。結果として、国内の研究施設の規模はより高コストになり、核融合による発電は遅れる。それでも米国がITERから撤退すると決定するのであれば、エネルギー省(DOE)は小型核融合プラントの建設につながる研究を継続するための計画に着手すべきである、と報告書は締めくくっている。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]