2019年5月30日付ロシア大統領府の標記発表では、人工知能（AI）の技術開発に関する会合におけるプーチン大統領の冒頭演説等の内容を報じている。演説の概要は以下のとおり。

AIのメカニズムは、ビッグデータとして知られる膨大な量の情報の分析に基づいて迅速でリアルタイムの意思決定を可能にする。それは品質と効果の面で途方もない利点をもたらす。さらには、経済や生産性へのインパクト、経営、教育、医療、日常生活への有効性の点で、歴史的にも比類のないものである。

ロシアの経験、国際的な経験、そして世界の動向に基づいて、戦略において焦点を当てるべき課題と優先すべき事項は何か。

第1の優先課題は、概念的に新しい基盤となる土台を築き、AIに必要な数学的手法と（人間の脳に基づくものを含む）操作原理を作り出すことである。ロシアは、世界中の科学者が関わる最も複雑な科学的問題の解決を目的とする主要プラットフォームの１つになる必要がある。この仕事はモスクワ、サンクトペテルブルグ、ソチに来年開設される国際数学センターでも実行可能である。実際にこれら国際数学センターは、我々がすでに保有する施設を補完するものである。AI研究向けの資金支援を増やし、民間投資と企業の科学研究開発に対するインセンティブを創出することが必要である。

第2に、独自の人員・知的能力を育成し、人材を保持し、世界中から優秀な専門家を引き付ける必要がある。ロシアには現在この業界に従事する人が大勢いるが、それでもこの領域で主導権を握ろうとしている他の諸国に比べるとかなり少ない。ロシアがこの主導権を確保するには、大学等におけるAI研究プログラムを展開する必要がある。
またプログラマー、技術者、科学者にとっては金銭的インセンティブ、遠隔勤務といった快適な作業環境など、効率的なメカニズムの提案も重要である。さらに外国で仕事をしているトップクラスの専門家（その中にはロシア人が多数いる）については、ロシアに戻り自国の同僚と一緒に仕事をできることが望ましい。もちろん、必要に応じて、市民権、労働許可証、その他の要件に関連する手続きを迅速化することが重要である。

第3は、新しい技術の現実に合わせて法制度を最新の状態にすることが極めて重要である。AIベース・ソリューションの開発・適用に必要な柔軟かつ適切な法的枠組みのほか、画期的ソリューションに対する民間投資に必要な特例規制措置の策定に向けて、迅速に質の高い施策を実行することである。そして知的財産権の確たる保護およびロシア国内法制度下での特許登録に必要な法的環境を確実に保証することである。

第4に、データ流通にとって効率の良い法規制、データの処理・保存に必要な高度インフラを構築するとともに、AIアルゴリズムの開発にデータの利用を可能とする均衡のとれたソリューションを提案する必要がある。最終的に最も重要なことは、我々の社会と民衆がこの技術を広く普及させるだけの用意ができているかどうかであり、大衆への大規模なデジタル・リテラシー・再教育プログラムの提供が必要とされる。

[DW編集局]