[本文]

国・地域名:
ドイツ
元記事の言語:
ドイツ語
公開機関:
ドイツ連邦教育研究省(BMBF)
元記事公開日:
2020/07/20
抄訳記事公開日:
2020/09/23

コロナウイルスの理解を深めるための資金を3倍に増額

Karliczek: Finanzielle Mittel zum besseren Verständnis des Coronavirus verdreifacht

本文:

ドイツ連邦教育研究省(BMBF)は手続きを加速化したSARS-CoV-2研究プロジェクトに4,500万ユーロを投資することとし、これに関して概略下記のような報道発表を行った。

BMBFはコロナウイルスSARS-CoV-2と同ウイルスによって引き起こされる疾病Covid-19に対する効果的な戦略や治療の研究を強化する。ウイルスに対する理解を深めるための最初の研究プロジェクトは既にスタートしている。これに関してカルリチェク大臣は次のように表明した。

「ウイルスの生態および蔓延経路をより深く理解することは、効果的治療やウイルス抑制のための措置にとって非常に重要である。同時にパンデミックとの関連における政治的決断および社会的な提言がどのように個人や社会全体に影響するのかを調査していきたい。研究者は知見およびコミットメントにより、一歩一歩通常の生活に戻るために最善を尽くす。BMBFは研究者のために、研究に必要とされる基本条件を整えていく所存である。

コロナウイルス研究の助成公募のために予定されていた資金を3倍に増額した。BMBFは90の傑出したプロジェクトに合計4,500万ユーロを投資する。これら助成対象プロジェクトは科学分野を幅広く網羅し、パンデミック関連の基礎研究から臨床試験、さらには倫理的、法的、社会的問題設定の分析にまで及ぶ。また、長期的にパンデミックに対処していくために、全力で未解決の問題に対処していく。

この緊急事態において、これらプロジェクトをできる限り迅速にスタートできるようにするため、3月3日の助成公募に関しては特別な条件が適用された。特別に早い手続きで500以上のプロジェクトアイデアが審査された」。

背景:
3月3日に発表された助成プログラムの公募は、BMBFによる無期限のモジュール3(Rapid Response )に基づいている。これはBMBFが2016年2月15日付連邦官報に発表した「人獣共通感染症の国家研究ネットワーク」の助成に関するガイドラインである。

このモジュールは、緊急に発生した感染症において、緊急助成手続きによる特別助成措置を別途定めるものである。これにより研究者は通常のプロジェクトよりも迅速に資金を受け取ることができるようになる。この助成は既に進行中のBMBFのワクチン開発および大学医学の強化に関する支援策を補うものである。

以下この助成公募による4プロジェクトを例示する:

  • 「コロナ・ケア」(ELSA研究)
    共同体や家庭における社会的交流がCovid-19パンデミックに対する対処措置によってどのような影響を受けるのかを調査する。それによって不安や憂慮等への対応に関する戦略および提言が導き出される。コロナ・ケアは民俗学的研究として実施される。
  • “OrganSars”(基礎研究)
    コロナウイルス SARS-CoV-2による感染の詳細をできる限り自然の条件下で研究できるようにするため、ルール大学の研究チームがヒトの肺オルガノイド(肺組織を三次元的につくったオルガン類似のマイクロ構造)を幹細胞から創り出す。これによって肺組織の各種の細胞タイプ間の複雑な相互作用を調べることができる。この技術はハイスループット方式で各種の抗ウイルス作用物質による試験の実施を可能にする。
  • RECOVER(臨床研究)
    このプロジェクトの目標は、COVID-19感染症を乗り切り、SARS-CoV-2抗体を有した人々の血漿を用いて、COVID-19患者を治療することの有効性を調査することである。重症の経過を伴うCOVID-19患者で、しかし人工呼吸器を必要としない患者も対象とする。血漿による治療効果を標準的な治療と比較する。既に、治癒した人々からの血漿はSARS、エボラ、あるいはインフルエンザに感染した患者の死亡率を減少させることができるとの証拠がある。また、COVID-19による個々の重症の患者においても、このアプローチは既に試験されているが、臨床研究による体系的な試験結果はこれまでなかった。このアプローチが有効である場合、それは将来、ウイルスによるパンデミックが起きた場合、新しいウイルスの発生と効果的なワクチンが入手可能となるまでの間の橋渡しするための青写真として役立つ。
  • COVID19HOSTaGE (遡及的、疫学的研究)
    COVID-19疾患の経過は、無症状の経過から重症の肺疾患にまで及ぶ。これまでのところ、どのようなファクターが病気の重症度を決定づけるのか知られていない。このプロジェクトでは遺伝子シグネチャーが病気の経過に与える影響を調査する、例えば血液型が感染プロセスあるいは病気の重症度に関連しているかどうか等である。更に、特定の遺伝子シグネチャーが生物学的メカニズムを予測できるのか、そしてそれに伴い効果的な治療方法を可能にするのか否かを調査する。計画されている分析は、欧州で最も影響を受けた地域で採血された5,000件の血液サンプルを基盤とする。計画される研究は遡及的に実施される、従って、最初の結果は2020年8月末に得られると期待される。

[DW編集局]